乳がんの既往歴のある女性における外陰腟萎縮症に対する腟エストロゲン療法-請求データベース分析(原題:Vaginal Estrogen Therapy for Vulvovaginal Atrophy in Women with a Personal History of Breast Cancer – A Claims Database Analysis)
K Dumas, S Singh, J Kohn, T Kohn, M Clifton
The Journal of Sexual Medicine, 19巻, Issue Supplement_3, August 2022, ページ S4-S5,
https://doi.org/10.1016/j.jsxm.2022.05.014
発行:2022年8月1日
はじめに
乳癌に対する全身療法(選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、アロマターゼ阻害薬(AI)、卵巣摘出術、化学療法)により、閉経後乳癌生存者の最大70%において外陰腟萎縮(VVAまたは萎縮性腟炎)が生じることが多い。このような患者では全身エストロゲン療法が避けられることが多いが、腟エストロゲン療法は乳癌生存者のVVA症状の治療に使用できる安全な治療選択肢である。
目的
我々の目的は、米国の大規模な請求データベースを用いて、VVAと診断され乳癌の既往歴のある女性に対する腟エストロゲンの使用を評価することである。
方法
1億9,000万人の患者を対象とした米国の健康研究ネットワークであるTriNetX Diamondネットワークデータベースを検索し、2009年から2021年の間の医療受診と処方を網羅した。閉経後萎縮性腟炎または外陰萎縮(ICD-10 N95.2、N90.5)と診断された女性を対象とした。このうち、乳癌(C50またはZ86.000)と診断された女性は、その診断がVVA診断の少なくとも1ヵ月前であれば対象とした。エストロゲン受容体の状態は、入手可能な場合に収集した(ICD-10 Z17.0、Z17.1)。VVA診断後1年以内に処方されたVVA治療薬を対象とした。乳癌の既往歴のある患者における腟エストロゲン使用の罹患率は、2013~2015年、2016~2018年、および2019~現在について決定した。
結果
合計2,159,766人のVVAの女性が同定され、そのうち4.8%(n=104,327)が乳がんの個人歴を有していた。腟エストロゲンの処方は、乳がんの既往がない女性と比較して、既往のある女性に処方される頻度が低かった(11% vs 22%、p<0.01、表1)。VVAと乳癌既往歴のある女性に対する腟エストロゲン処方の罹患率は、2013年から現在まで10~11%前後で安定している。VVAと乳癌の既往のある女性25,410人がエストロゲン受容体陽性(ER+)、4,893人がエストロゲン受容体陰性(ER-)であった。ER+患者とER-患者で腟エストロゲン処方に差はなかった(7.4%対8.4%)。
結論
腟式エストロゲンは、VVAと乳癌の既往歴のある女性に安全に使用できるが、対象となる患者にはほとんど処方されていない。外陰腟萎縮症患者のQOLを大幅に改善するためには、このような集団における腟エストロゲンの処方と使用の障壁を調査すべきである。
情報開示
なし