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公開日:2020/02/04
最終更新日:2021/05/19

【モナリザタッチの効果】2017年11月4日:日本女性医学学会での発表|産科・婦人科 江川クリニック

記事監修

江川 晴人
京都大学医学部
医学博士 日本産科婦人科学会 専門医・指導医,日本周産期・新生児医学会 周産期専門医・指導医(母体胎児),日本女性医学学会 女性ヘルスケア専門医,母体保護法指定医

投稿日:2020年2月4日 更新日:

【モナリザタッチの効果】2017年11月4日:日本女性医学学会での発表|産科・婦人科 江川クリニック

閉経関連泌尿生殖器症候群に対する腟粘膜炭酸ガスフラクショナルレーザー照射治療の腟内細菌叢の改善効果に関する検討【産科・婦人科 江川クリニック 院長 江川 晴人】

背景

萎縮性腟炎は血中エストロゲンの低下によって、腟や膀胱、尿道組織の萎縮が起こり、その結果、様々な症状が出現するものである。
腟粘膜上皮の分化能が低下し、腟壁は萎縮・菲薄化してグリコーゲン産生能が低下する。
それによりLactobacillus spが減少し腟内pHが上昇し感染を起こしやすい環境になる。症状の多くは、腟の乾燥感・外陰部の痒みや刺激症状・性交痛といった「女性性器の症状」と頻尿や尿意切迫感といった過活動膀胱などの「泌尿器の症状」をきたす。
60歳以上の健康女性の約半数に何らかの腟萎縮の症状がみられるとの報告もある(文献1)

閉経関連泌尿生殖器症候群(Genitourinary syndrome of menopause, GSM)は萎縮性腟炎に変わり、2013年に北米閉経学会など4学会から提唱された新しい疾患概念である。

閉経に関連した血中エストロゲンの低下により、外陰部の乾燥、灼熱感、違和感などの腟・外陰部の症状を呈するもので、さらに性生活の障害や尿失禁、頻尿、排尿障害および繰り返す尿路感染といった下部尿路の症状なども包括するものである。(文献2)
このGSMに対し、腟・外陰部の炭酸ガスフラクショナルレーザー照射治療(Fractional CO2 laser treatment, FCLT)は女性ホルモン剤を使用しない腟粘膜の若返り治療法として注目されている。(文献3)
FCLTは小さなドット上のレーザー光線を等間隔で照射するもので、もともと美顔治療として用いられてきた。
この手段を、腟粘膜や外陰部に照射することで、局所の粘膜や皮膚の若返りをきたし、加齢による女性特有のさまざまな不快症状を緩和・改善する目的で開発された。当クリニックでは、イタリアDEKA社のSmart X‘IDE Touch(通称:モナリザタッチ)を導入している。
腟・外陰部のFCLTの治療公開についての報告は十分な有効性を示すものが多いが、ここの患者の治療効果はVASを用いて評価している文献がほとんどで、客観的なパラメータで検討している報告は少ない。
Lactobacillus(ラクトバキルス)は、グラム陽性の通性嫌気性または微好気性、桿菌、非芽胞形成性の真正細菌の属である。ラクトバシラス属は、糖を乳酸に代謝する乳酸菌群の大部分を占めている。
引用:WIKIPEDIA

目的

GSM症例に対するFCLTの治療効果の客観的な評価指標として、腟分泌物の有効性を検討する。

対象

当院で、2016年7月から2017年9月までにFCLTを行い(照射回数1〜6回)、1ヶ月以上経過したGSMの25症例にうち、術前にエストロゲン補充療法が行われていた2例と本研究の同意を得られなかった1例を除外した22例(62照射)を検討の対象とした。

平均年齢

56.2±9.4歳(35〜75歳)

初診時の主訴

・性交痛:15例
・頻尿:3例
・尿漏れ:3例
・性交後不正出血:2例
・腟の緩み:2例
・異物感:2例
・乾燥感:1例
・萎縮感:1例(重複あり)

経産

・未産婦:10例
・経産婦:12例

既往歴

・筋腫:5例
・子宮内膜症:3例
・子宮体がん:2例
・卵巣がん:1例
・子宮内膜増殖症疑い:2例
・強皮症:1例
・多産:1例
・既往歴なし:7例

照射回数

・1回:4人
・2回:9人
・3回:13人(一人あたり、平均2.8回)

方法

  • 自覚症状の改善効果については、VASスコアによるアンケートを用いて評価した。
  • 施術前後の腟内のLactobacillusが含まれるグラム陽性桿菌の菌量を測定し、FCLTの腟内環境に対する改善効果について検討した。
    細菌量の評価にはコマーシャルベースの腟分泌細菌培養検査を用いた。Lactobacillusが含まれるグラム陽性桿菌(GPR)の菌量が、0〜1+をGPR「陰性」郡、2+〜4を、GPR「陽性」郡とした、術後にGPRが2+以上になったものを「陽性化」とした。

結果

①自覚症状の「かゆみ」、「乾燥感」、「灼熱感」、「性交痛」、「腟のゆるみ」、「尿漏れ」の6項目をVASスコアのアンケート形式で1ヶ月おきに調査。

※術前より自覚症状のある症例のみを対象とした。

■かゆみ
12345678910

■乾燥感
12345678910

■灼熱感
12345678910

■性交痛
12345678910

■腟のゆるみ
12345678910

■尿漏れ
12345678910


 

②腟内細菌叢の変化

・症例の分類 25例(除外3例)→22例
22例
GPR「陰性」15例(56.2歳)→GPR陽性化あり8例(55.8歳)
                  →GPR陽性化なし7例(56.7歳)
GPR「陽性」7例(49.2歳)
 
・GPR「陰性」郡のうち、陽性化した8症例の経時変化
→1回照射後GPR陽性化:2例(8例中)→25%
→2回照射後GPR陽性化:5例(8例中)→62.5%
→3回照射後GPR陽性化:3例(5例中)→60%
 

モナリザタッチの効果①

VASスコアを用いた自覚症状の変化を症例ごとに経時的に示した。初診時に自覚症状を有していたものと、初診時にはなかったが、術後に自覚したものを併せて症例数とした。痒み、乾燥感、灼熱感、性交痛、腟のゆるみ、尿漏れの6項目のすべてにおいてFCLTによる改善が示された。
 

モナリザタッチの効果②

22症例のうち、15例がGPR「陰性」で、8例がGPR「陽性」であった。
GPR「陽性」郡には35歳と42歳の症例も含まれ、また、サプリメント「エクオール製剤」内服中の症例も1例あった。
GPR「陰性」郡では1回の照射で2例が陽性化し、2回の照射では、5例が陽性化した。3回以上、照射したものは5症例であるが、3回照射した時点での陽性化率が60%であった。最終的には、15症例中8症例で、GPRの陽性化が観察された。

結語

GSMに対するFCLTの治療が、VASによる治療効果判定では概ね有効であった。

 

一方、このVASによる評価方法は自覚症状が中心であるため、客観的な治療効果の指標が期待される。

 
本研究の結果から、腟分泌中のGPRは、「陰性」郡において、2回以上のFCLTで、60%以上が陽性化しており、腟分泌物細菌培養検査が、FCLTの治療効果を判断する際に有効である可能性が示された。
 

参考文献

  • 産婦人科診療ガイドライン 産婦人科外来編2017
  • Portman DJ, Gass ML, Menopause,2014
  • Salvatore S,Nappi RE,et al.,Climacteric.2015

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