セックスセラピーとは?
セックスセラピーとは、性機能不全や、性機能障害などの悩みを抱えている人に対する「心理的療法」いわゆる、カウンセリングの事を言います。性行動の喜びや、幸福感を得られない様な問題・課題があったときに、それをサポートし解決に導く事。それが、セックスセラピーです。
「性機能不全」は総称として、「性機能障害」は各疾患名として使用される事が多いです。
性機能不全は、国際疾病分類にも載っている立派な疾患ですが、疾患ではなく、個人的な悩みとして扱われてしまう場合が多いのが日本の現状です。
日本では保険病名としても採用されておらず、性機能不全に関しての検査を行いたい場合や、改善の為の治療を行いたくても、薬を処方してもらいたくても、健康保険の適用外となってしまいます。
世界には、性機能不全に関する研究・診療を行っている大学も多数あり、性機能に関する論文も数多く、インターネットで確認する事ができます。それでも、性の健康に対する認知や、正しい対応について、まだまだ不十分であるとされ、今後の重要課題として認識されています。
人の性行動について、その全てが子どもを作るためではありませんし、暴力・性病・疾患など、ネガティブな面があるのも事実です。
ですが、性行動とは人間が求めて当たり前のものなのです。
それは健常者だけではなく、病気を抱えている人や、身体に障害がある人も皆同じです。
人生を豊かにし、心を満たし、幸福に繋がる性行動を諦めたり、否定してはいけません。
セクシュアルヘルスとは?
生物の三大欲求は「睡眠欲・食欲・性欲」である事はご存じでしょうか。セクシュアルヘルスとは、性の健康の事を言い、世界保健機関(WHO)の健康の定義に沿った、健康という概念の重要な柱の一つです。
人間にとって性を満たすという行動は、生物として正しい反応であり、生き物の本質であると言えます。
性に対する考えの歴史
健康でありたい、という気持ちは個人的なものですが、性の健康に関しては個人の問題に収まらない場合もあります。例えば自分の「性に関する意識」が、社会通念とはかけ離れている事を知ったり、自分の「性の健康」が原因で、パートナーとの関係性がうまくいかなくなったりするなど、問題が個人で完結せず、性の健康課題が生まれる事もあります。
性の健康について定義するのは大変難しいことです。
歴史的にも、女性に対する性差別や暴力・偏見と戦いながら、その考えを進化させてきました。同じく性の自由に関しても、一般常識・秩序・法律と、個人の意志というバランスの中で、模索され続けています。
性の歴史と権利の変化
「オナニー」という言葉の語源を知っていますか?旧約聖書の創世記38章の中にある、「亡くなった兄の代わりに兄嫁と結婚したオナンが精液を地に放出した」この表現が、オナニーの語源となっているそうです。
このように、歴史の中で生まれる様々な芸術作品や文学の中で、人は性の表現を行ってきました。また、性の表現を作品に込める事で、その時代の社会背景を表す事もしていました。
性の健康と権利に関して、世界ではこれまでに様々な宣言や提案が出されてきました。
1929年、The World League for Sexual Reform programがヨーロッパを中心に発表した宣言では、これまでの女性差別的な考えに反し、以下の様な記載がありました。
・結婚、離婚の権利
・女性も社会の一員であること
・子供を出産することに責任を持つ事
・優生思想
・性産業や性感染症の防止
そこから46年後、WHOは性に関する治療や、人々への性教育について言及しています。
人々にとって一番大きな意識改革となったのは、1994年、国際人口開発会議のリプロダクティブヘルス・ライツ(性と生殖に関する健康とその権利)です。
これまでの子どもを産み育てる「母子保健」ではなく、妊娠出産のするしないに関わらず、女性ひとりひとりに目を向け、女性の生涯の健康をケアするという概念です。
人工妊娠中絶の権利も避妊や出産など、他の課題等同等の権利とみなされました。
様々な国・宗教・思想などがある中で、それを越えて性の権利が認められるということが、大変重要な事なのです。
【性の健康の概念】
1975年 |
世界保健機関(WHO) |
人のセクシュアリティの教育と治療 医療従事者のトレーニング(WHO会議報告) |
1987年 |
WHO欧州事務局 |
性の健康の概念 |
【人権における性の問題、生殖やジェンダーの問題を含む】
1968年 |
国際連合 |
テヘラン宣言 国際人権会議の最終提案 |
1993年 |
世界人権会議 |
ウィーン宣言と行動計画 |
1994年 |
国際人口開発会議(ICPD) |
カイロ会議 |
1995年 |
第4回世界女性会議 |
報告(北京会議) |
【性と生殖の健康領域での人権を包括】
1996年 |
国際家族計画連盟 |
性と生殖の権利 |
1997年 |
性の健康世界学会(WAS) |
性の権利宣言(バレンシア) |
1999年 |
WAS |
性の権利宣言(香港) |
2000年 |
全アメリカ健康組織/WAS |
性の健康の推進 行動計画 |
2002年 |
WHO 地域会議 |
性の健康と性の権利に関する仮定義 |
2005年 |
モントリオール宣言 |
|
2014年 |
WAS |
性と生殖の権利改訂版 性の権利宣言 |
【ジェンダーアイデンティティや差別に対する戦いに関連する課題】
2007年 |
ジョグジャカルタ原則 |
性指向と性自認に関する国際人権法 |
2009年 |
ジェンダーアイデンティティと人権に関する報告書 |
|
2015年 |
欧州会議 |
欧州のトランスジェンダー差別に対する決議案 |
まとめ
性に関して相談できる人が身近にいないかったり、悩みや問題を恥ずかしく思い、隠してしまったり、ないようにふるまう事があるかも知れません。しかし、歴史的な流れにもあるように、性の権利とは基本的人権の大事な一部分なのです。
性的な事についても、自分の身体の健康を思うのと同じように考えていく事が自然であり、重要な事なのです。
心身共に健康的な人生を送る為、性の健康についても向き合ってみるのは如何でしょうか。