日本ではほとんど知られていませんが「経口中絶薬」と呼ばれる、外科的な処置なしで薬のみで人工妊娠中絶をおこなう薬が存在します。
海外では多くの国でこの経口中絶薬が承認されていますが、日本では発売や譲渡は法律で固く禁止されています。
しかし、日本国内でも治験がおこなわれ、経口中絶薬の有効性と安全性が確認されたと報告され、日本国内でも2021年内をめどに承認の申請をする見通しとなっています。
薬によって中絶がおこなえると聞くと、リスクもなく簡単にできると思ってしまう方もいらっしゃるかも知れませんが、経口中絶薬にはたくさんの副作用やリスクも存在しています。
経口中絶薬を使用した方の死亡例もあるため、今後日本で経口中絶薬が承認されたとしても、使用する際には十分注意が必要です。
この記事では経口中絶薬について詳しく解説します。
1988年にフランスで承認されて以降、アメリカ、イタリア、ロシア、イギリス、スウェーデン、フィンランド、オランダ、デンマーク、タイ、中国、インドなど世界70カ国以上で認められているものの、日本では承認されておらず、個人輸入も禁止されています。
なお、ミフェプリストン(MIFEPRISTONE)というのは物質名で、アメリカでは「ミフェプレックス(MIFEPREX)」、ヨーロッパでは「ミフェジン(MIFEGYNE)」、中国では「息隠(米非司酉同片)」、台湾では「保諾(Apano)」と呼ばれています。開発時の名称である「RU486」と呼ばれることもあります。
経口中絶薬は輸入制限がかけられているため、本来は海外からも輸入できないはずの薬です。しかし、実際に日本国内で個人輸入によって経口中絶薬を手に入れ、その後トラブルとなり病院に搬送されているケースがありました。
そのため厚生労働省もホームページ上で注意喚起をおこなっており、くれぐれも個人輸入はしないように呼びかけています。
下記では、FDA(アメリカ食品医薬品局)とWHO(世界保健機関が推奨している経口中絶薬の使用方法をご紹介します。
200mgのミフェプリストン内服の24時間から48時間後に800μgのミソプロストールを投与。
【妊娠7週まで】
200mgのミフェプリストン内服の24時間から48時間後に800μgのミソプロストールを腟内、舌下、頬側投与もしくは400μgのミソプロストールを内服。
【妊娠7週から9週】
200mgのミフェプリストン内服の24時間から48時間後に800μgのミソプロストールを腟内、舌下、頬側投与する。内服での投与は不可。
【妊娠9週から12週】
200mgのミフェプリストン内服の36時間から48時間後に800μgのミソプロストールを腟内投与(800μg)し、その後は子宮の内容物が排出されるまで3時間から4時間ごとに400μgのミソプロストール腟内もしくは舌下投与する。
相手が避妊に非協力的なことや性暴力などによる予期せぬ妊娠が課題となっていますが、日本でおこなわれている人工妊娠中絶は初期中絶の場合で10万円〜20万円、中期中絶の場合は40万円から60万円ほどかかるため、経口中絶薬という選択肢が日本でも選択可能になればこれまでに比べて経済的な負担をかなり抑えることができるようになります。
経口中絶薬を使用した中絶が完了した後、時間を空けずに次の妊娠が可能だと言われています。
妊娠を望んでいないのであれば中絶が終わった直後からしっかりと避妊をおこなう必要があります。
日本では、1年間でおよそ15万件の人工妊娠中絶がおこなわれていると言われていますが、現時点では日本では経口中絶薬は承認されていないため、初期中絶ではソウハ法や吸引法と呼ばれる方法での処置がおこなわれています。
日本産婦人科医会がおこなった2012年度の調査結果によれば、吸引法が2割、ソウハ法が3割、両方を併用した方法が5割という割合だったといいます。
このソウハ法と呼ばれる方法は子宮に危惧を入れて胎児や胎盤をかき出すという方法ですが、母体を傷つけてしまうリスクがあることが知られています。
WHOはソウハ法を時代遅れの方法だとして別の方法への切り替えを推奨していますが日本の厚生労働省はソウハ法の安全性は調査によって確認されているとしています。
また、厚生労働省は経口中絶薬の個人輸入も禁止していますが、これらの状況について医療関係者や女性の健康・権利を求める団体からは承認を求める声が上がっています。
初期中絶や中期中絶の手術費用に比べれば経口中絶薬は非常に安価で、また、身体や精神面への負担も少ないと考えられているためです。
ウィメン・オン・ウェブは医師や研究者、活動家というメンバーで構成された世界中の女性のための遠隔医療サポートサービスです。
まずはインターネットでウィメン・オン・ウェブにオンライン診療を申し込みます。その後、ウィメン・オン・ウェブに所属している医師がオンライン診察内容をチェックして、問題なければ薬が処方されるようになっています。
その後は医師の処方箋に基づき、経口中絶薬か避妊薬が郵便で配達となります。
厚生労働省によればウィメン・オン・ウェブを通じて経口中絶薬の処方を受ける場合は個人輸入に分類され医師の指示書や診断書が必要になりますが、国外の医師による処方箋は指示書にあたるため、ウィメン・オン・ウェブからの経口中絶薬の取り寄せはきちんとした手続きを踏めば問題なくおこなえます。
ただし、正常妊娠ではなく子宮外妊娠(異所性妊娠)だった場合、経口中絶薬(ミフェプリストン)に効果はなく、子宮外妊娠と気づかないまま経口中絶薬を使用すると腹腔内出血、卵管の破裂による激痛、多量出血の危険があるためくれぐれも注意が必要です。
日本国内での有効性と安全性を確かめるために治験をおこなったのはイギリスの製薬会社である「ラインファーマ」で、妊娠9週までの120人にミフェプリストンとミソプロストールを投与した結果、想定していた24時間以内に全体の93%である112人が薬のみで中絶を完了したという結果が出ています。
残りの8人については子宮内容物が時間内に排出されなかったり、一部身体の中に残ったりしたことで外科的な処置が必要になったそうです。
ただし、経口中絶薬を使った中絶は自然流産と似ているため、出血は経口中絶薬による中絶のプロセスの一部であり、出血して当たり前という指摘もあります。
いずれにせよ安全に使用するため医師の支持に従い、安全な状況で薬剤による中絶をおこなう必要があります。
また、致死性を含む重篤な感染症も報告されていますが、これらは不適切な治療も原因であったとされており、すべての有害事象がミフェプレックスによるものだと断定されてはいません。
そのため、正しい手続きの手順を踏んだうえでウィメン・オン・ウェブへ支援の依頼をする以外には入手方法がありません。
しかし、日本国内でも2021年内をめどに国へ承認を申請する見通しであると言われており、承認されれば日本でも経口中絶薬が選択できるようになります。
ただし、経口中絶薬には注意点も数多くあります。子宮外妊娠であった場合は卵管破裂などの激痛、多量出血による死の危険もあるため、医師による経過観察を受けることが重要です。
海外では多くの国でこの経口中絶薬が承認されていますが、日本では発売や譲渡は法律で固く禁止されています。
しかし、日本国内でも治験がおこなわれ、経口中絶薬の有効性と安全性が確認されたと報告され、日本国内でも2021年内をめどに承認の申請をする見通しとなっています。
薬によって中絶がおこなえると聞くと、リスクもなく簡単にできると思ってしまう方もいらっしゃるかも知れませんが、経口中絶薬にはたくさんの副作用やリスクも存在しています。
経口中絶薬を使用した方の死亡例もあるため、今後日本で経口中絶薬が承認されたとしても、使用する際には十分注意が必要です。
この記事では経口中絶薬について詳しく解説します。
Contents
経口中絶薬とは?
経口中絶薬「ミフェプリストン(MIFEPRISTONE)」とは、最後に月経があった日から49日以内という妊娠初期に使用する薬です。1988年にフランスで承認されて以降、アメリカ、イタリア、ロシア、イギリス、スウェーデン、フィンランド、オランダ、デンマーク、タイ、中国、インドなど世界70カ国以上で認められているものの、日本では承認されておらず、個人輸入も禁止されています。
なお、ミフェプリストン(MIFEPRISTONE)というのは物質名で、アメリカでは「ミフェプレックス(MIFEPREX)」、ヨーロッパでは「ミフェジン(MIFEGYNE)」、中国では「息隠(米非司酉同片)」、台湾では「保諾(Apano)」と呼ばれています。開発時の名称である「RU486」と呼ばれることもあります。
経口中絶薬は輸入制限がかけられているため、本来は海外からも輸入できないはずの薬です。しかし、実際に日本国内で個人輸入によって経口中絶薬を手に入れ、その後トラブルとなり病院に搬送されているケースがありました。
そのため厚生労働省もホームページ上で注意喚起をおこなっており、くれぐれも個人輸入はしないように呼びかけています。
経口中絶薬の使用方法
経口中絶薬による中絶では、下記の2つの薬の併用が推奨されています。- ミフェプリストン…妊娠を続けるのに必要なホルモンである「プロゲステロン」の働きを抑える薬
- ミソプロストール…子宮の入り口を開き、子宮を収縮させる(陣痛)ことで人工的に流産を起こさせる薬
下記では、FDA(アメリカ食品医薬品局)とWHO(世界保健機関が推奨している経口中絶薬の使用方法をご紹介します。
FDA(アメリカ食品医薬品局)
FDAでは最後の月経の初日から70日以内の妊娠に使用可能としており、投与量・投与のタイミングは下記のようにしています。200mgのミフェプリストン内服の24時間から48時間後に800μgのミソプロストールを投与。
WHO(世界保健機関)
WHOでは、妊娠週数によって投与量・投与のタイミングなどを変えることを推奨しています。【妊娠7週まで】
200mgのミフェプリストン内服の24時間から48時間後に800μgのミソプロストールを腟内、舌下、頬側投与もしくは400μgのミソプロストールを内服。
【妊娠7週から9週】
200mgのミフェプリストン内服の24時間から48時間後に800μgのミソプロストールを腟内、舌下、頬側投与する。内服での投与は不可。
【妊娠9週から12週】
200mgのミフェプリストン内服の36時間から48時間後に800μgのミソプロストールを腟内投与(800μg)し、その後は子宮の内容物が排出されるまで3時間から4時間ごとに400μgのミソプロストール腟内もしくは舌下投与する。
経口中絶薬の価格
経口中絶薬の価格は国連人口基金によれば海外の場合はおよそ4ドルから12ドルが平均価格となっており、これは日本円にすると430円から1300円ほどになります。相手が避妊に非協力的なことや性暴力などによる予期せぬ妊娠が課題となっていますが、日本でおこなわれている人工妊娠中絶は初期中絶の場合で10万円〜20万円、中期中絶の場合は40万円から60万円ほどかかるため、経口中絶薬という選択肢が日本でも選択可能になればこれまでに比べて経済的な負担をかなり抑えることができるようになります。
経口中絶薬を使っても今後妊娠は可能?
経口中絶薬を使用するうえで気になるのが「今後妊娠できなくなってしまったりしない?」という不安ではないでしょうか。経口中絶薬を使用した中絶が完了した後、時間を空けずに次の妊娠が可能だと言われています。
妊娠を望んでいないのであれば中絶が終わった直後からしっかりと避妊をおこなう必要があります。
日本の人工妊娠中絶について
日本では、1年間でおよそ15万件の人工妊娠中絶がおこなわれていると言われていますが、現時点では日本では経口中絶薬は承認されていないため、初期中絶ではソウハ法や吸引法と呼ばれる方法での処置がおこなわれています。
日本産婦人科医会がおこなった2012年度の調査結果によれば、吸引法が2割、ソウハ法が3割、両方を併用した方法が5割という割合だったといいます。
このソウハ法と呼ばれる方法は子宮に危惧を入れて胎児や胎盤をかき出すという方法ですが、母体を傷つけてしまうリスクがあることが知られています。
WHOはソウハ法を時代遅れの方法だとして別の方法への切り替えを推奨していますが日本の厚生労働省はソウハ法の安全性は調査によって確認されているとしています。
また、厚生労働省は経口中絶薬の個人輸入も禁止していますが、これらの状況について医療関係者や女性の健康・権利を求める団体からは承認を求める声が上がっています。
初期中絶や中期中絶の手術費用に比べれば経口中絶薬は非常に安価で、また、身体や精神面への負担も少ないと考えられているためです。
日本で経口中絶薬は入手可能?
現時点(2021年5月17日時点)で日本で経口中絶薬を入手したい場合は、カナダの非営利団体「ウィメン・オン・ウェブ(Women on Web)」へ支援の依頼をする必要があります。ウィメン・オン・ウェブは医師や研究者、活動家というメンバーで構成された世界中の女性のための遠隔医療サポートサービスです。
まずはインターネットでウィメン・オン・ウェブにオンライン診療を申し込みます。その後、ウィメン・オン・ウェブに所属している医師がオンライン診察内容をチェックして、問題なければ薬が処方されるようになっています。
その後は医師の処方箋に基づき、経口中絶薬か避妊薬が郵便で配達となります。
厚生労働省によればウィメン・オン・ウェブを通じて経口中絶薬の処方を受ける場合は個人輸入に分類され医師の指示書や診断書が必要になりますが、国外の医師による処方箋は指示書にあたるため、ウィメン・オン・ウェブからの経口中絶薬の取り寄せはきちんとした手続きを踏めば問題なくおこなえます。
ただし、正常妊娠ではなく子宮外妊娠(異所性妊娠)だった場合、経口中絶薬(ミフェプリストン)に効果はなく、子宮外妊娠と気づかないまま経口中絶薬を使用すると腹腔内出血、卵管の破裂による激痛、多量出血の危険があるためくれぐれも注意が必要です。
日本でも経口中絶薬が2021年内めどで承認申請へ
2021年4月22日には日本でもついに経口中絶薬が2021年内をめどに承認申請されるということがニュースで報じられました。日本国内での有効性と安全性を確かめるために治験をおこなったのはイギリスの製薬会社である「ラインファーマ」で、妊娠9週までの120人にミフェプリストンとミソプロストールを投与した結果、想定していた24時間以内に全体の93%である112人が薬のみで中絶を完了したという結果が出ています。
残りの8人については子宮内容物が時間内に排出されなかったり、一部身体の中に残ったりしたことで外科的な処置が必要になったそうです。
経口中絶薬の注意点
経口中絶薬は現在日本でおこなわれているソウハ法や吸引法に比べると経済的負担や身体的負担、精神的負担も抑えられる方法ですが、注意点も存在します。副作用がある
経口中絶薬(ミフェプリストンとミフェプリストンの2つの薬の併用)には副作用も報告されています。- 倦怠感
- 頭痛
- めまい
- 寒感
- 吐き気
- 下痢
- 嘔吐
- 激しい下腹部痛
- 発熱
ただし、経口中絶薬を使った中絶は自然流産と似ているため、出血は経口中絶薬による中絶のプロセスの一部であり、出血して当たり前という指摘もあります。
いずれにせよ安全に使用するため医師の支持に従い、安全な状況で薬剤による中絶をおこなう必要があります。
死亡例がある
FDAが2000年9月にミフェプリストン(ミフェプレックス)を承認してから2018年12月31日に至るまで、24人の死亡が確認されています。このうちの2例は子宮外妊娠でした。また、致死性を含む重篤な感染症も報告されていますが、これらは不適切な治療も原因であったとされており、すべての有害事象がミフェプレックスによるものだと断定されてはいません。
経口中絶薬を服用してはいけない人もいる
経口中絶薬はすべての人が服用できるわけではなく、服用してはいけない人もいます。- 最後の月経開始日から49日以上経過している方
- ステロイド治療を長期的に受けている方
- 副腎機能に異常のある方
- 子宮外妊娠をしている方
- 血が止まらない病気にかかっている方
- 抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)を服用している方
- 遺伝性ポルフィリン症の方
- ミフェプリストン、ミソプロストールや同種の薬にアレルギーがある方
- 医師による経過観察を受けることができない方
- 子宮内避妊具IUDを挿入中の方(抜いてから使用する) など
まとめ
薬によって中絶をおこなうことができる経口中絶薬は現在の日本では承認されておらず、個人輸入も禁止されています。そのため、正しい手続きの手順を踏んだうえでウィメン・オン・ウェブへ支援の依頼をする以外には入手方法がありません。
しかし、日本国内でも2021年内をめどに国へ承認を申請する見通しであると言われており、承認されれば日本でも経口中絶薬が選択できるようになります。
ただし、経口中絶薬には注意点も数多くあります。子宮外妊娠であった場合は卵管破裂などの激痛、多量出血による死の危険もあるため、医師による経過観察を受けることが重要です。