妊娠していることがわかったものの、経済的な理由や望まない妊娠などの理由により、妊娠を継続することが難しいことがあります。
中絶手術(人工妊娠中絶)は、やむを得ない事情によって妊娠を続けることが難しい場合に医療機関で受ける、妊娠を中断するための手術のことです。
元々妊娠を望んでいたわけではなく、生理の遅れなどから妊娠検査薬で検査したことで妊娠の可能性があると判明した場合などはパートナーとの話し合いができていなかったり、費用面で心配があったりと、悩んでしまう方も少なくありません。
しかし、妊娠週数が進むと手術のリスクや経済的な負担は大きくなっていってしまいます。
「出産しようか、中絶手術を受けるか迷っている」「中絶費用はどうやって用意しよう」「パートナーに相談したほうがいいのか」など考えることはいくつもありますが、これらは病院を受診したあとでも考えられることです。
まずは早めに病院を受診し、本当に妊娠しているのかどうかや、妊娠週数を確かめましょう。
この記事では、中絶手術の基礎知識や手術を受けるタイミング、手術の流れなど、中絶手術について詳しく解説します。
中絶手術は医師であれば誰でもおこなえるわけではなく、母体保護法が指定する資格を持った医師のみに限られます。この資格を有する医師が「母体保護法指定医」です。
中絶手術を受けるのであれば、必ず各都道府県の医師会が指定する母体保護法指定医が在籍する病院を受診するようにしましょう。
過去には母体保護法指定医の資格を持たない医師による中絶手術によって女性が死亡してしまったケースもあるため、くれぐれも注意してください。
このため、中絶手術は妊娠21週6日までにしかおこなうことができません。なお、妊娠22週を過ぎた場合でも、なんらかの理由によって母体の生命が危険にさらされた場合などは、医療行為によって妊娠を中断させることもあります。(このような場合は中絶ではなく自然死産となります)
中絶手術は、妊娠週数によって「初期中絶」と「中絶手術」に分けられます。
妊娠11週6日目までの場合は初期中絶、妊娠12週~21週6日目までの場合は中期中絶となります。
妊娠10週を過ぎるとお腹の中の胎児はどんどん大きくなりますが、それに比例するように中絶手術の難易度と母体への負担は大きなものへと変わっていきます。
母体への身体的な負担や精神的な負担、経済的な負担など少しでも軽くするためにも、中絶手術をおこなうのであればなるべく早く手術を受けることが大切です。
日本では妊娠12週を超えて中絶手術をおこなう場合(中期中絶の場合)、死産届を提出しなければなりません。そのため妊娠11週6日目までに中絶手術を受けることが多くなっています。
また、日帰りで手術できる初期中絶は入院の必要はありませんが、中期中絶の場合は入院が必要になります。
中期中絶の手術は入院設備が整った病院でしか受けられず、初期中絶のみしかおこなっていない病院もあるため事前に確認しておきましょう。
ですが妊娠4週目や5週目では子宮頸管がとても硬く、中絶手術での子宮頸管拡張操作も非常に難しくなるため、妊娠6週目〜9週目に初期中絶の手術をおこなうのが母体にかかる負担やリスクが少ない時期だと言われています。
ただし、心臓疾患などの大きな病気がある方、帝王切開を受けたことがある方など、中絶手術にリスクがあると考えられる場合は小さな病院では手術が難しいケースもあります。
持病などがあり心配な方は入院設備の整った大きな病院を選ぶほうがいい場合もあります。まずは一度、病院へ足を運んで医師に相談してみるといいでしょう。
【妊娠日数・妊娠週数の計算方法】
いつも月経が来る予定日から4、5日ほど、月経不順の方の場合でも2週間ほど経過しても月経が来ないようであれば妊娠の可能性が考えられます。
予定日から1週間ほど経てば市販の妊娠検査薬を使って自分で検査することも可能ですが、妊娠検査薬の使い方によっては正しい結果が出ないこともあるため産婦人科を受診しましょう。
中期中絶の場合は通常の分娩の同じような形ですが、初期中絶の場合は「手動真空吸引法」もしくは「掻把法(掻爬法/ソウハ法)」と呼ばれる2種類の手術方法があります。
なお、日本でも「経口中絶薬」が2021年内をめどに承認申請される見通しです。審査で認められれば、手術が不要の中絶という選択肢も選べるようになることになります。
経口中絶薬は「ミフェプリストン」と「ミソプロストール」という2つの薬を順番に飲むことで妊娠を中断し、胎児や胎盤を排出させる薬で、日本ではほとんど知られていませんが世界では70カ国以上の国で承認されています。
やわらかい使い捨ての器具を使うため子宮内膜を傷つけてしまうリスクがなく、安全に、清潔に手術をおこなうことができます。また、痛みも少なく済みます。
日本でこの方法が認可となったのは2015年のことですが、世界的にはもっとも推奨されている中絶手術方法です。
医師が子宮内の状態を把握しやすいなどのメリットがありますが、医師の技術が不足していた場合、母体に傷をつけてしまうなど深刻なリスクが起こる可能性もあります。
水、ガムやアメ、常用薬、喫煙などもすべて禁止です。
なお、痛みはほとんどないため、心配ありません。
生理痛が非常に重い方や、子宮の曲がりが強い方は手術を受けた後に生理痛のような痛みを感じることもありますが、時間の経過によって痛みは軽くなっていきます。
費用相場は10万円〜14万円ほどで、妊娠週数によって変動します。
すでに記事でもご紹介の通り、中絶手術を受けるのであればなるべく早めにおこなう必要があります。
患者さんの負担を考えて初診料・カウンセリングや相談・検査費用を無料としている産婦人科もあるため、経済的な負担が気になって相談に行けないという方は初診料のかからない産婦人科を選んで早めの相談をするようにしましょう。
昭和の頃におこなわれていた中絶手術では、子宮の損傷や感染などの合併症が多く、不妊の可能性も考えられたといいます。
しかし、現在では最新の医療機器と手術方法により安全に中絶手術がおこなえるため、不妊になってしまうような合併症はほとんどありません。
安心して中絶手術を受けるためにも母体保護法指定医が在籍する経験豊富な病院を選ぶようにしましょう。
また、子宮外妊娠は見逃すと命にかかわることもあるため、出産するか中絶手術を受けるかに限らず「妊娠の可能性がある」と考えられる場合には早めに産婦人科を受診することが大切です。
病院を受診する際には「周囲の人にバレてしまわないか?」という不安をお持ちの方もいらっしゃると思いますが、病院には守秘義務があるため問い合わせがあったとしても診療内容を答えることはありません。
不安な方はしっかりとプライバシーに配慮している産婦人科を選ぶのがおすすめです。
誰にも相談できないという方は、信頼できる産婦人科を見つけて医師に相談するのもいいでしょう。「もっと早く病院を受診していればよかった」と後悔しないよう、早めの受診を検討してください。
中絶手術(人工妊娠中絶)は、やむを得ない事情によって妊娠を続けることが難しい場合に医療機関で受ける、妊娠を中断するための手術のことです。
元々妊娠を望んでいたわけではなく、生理の遅れなどから妊娠検査薬で検査したことで妊娠の可能性があると判明した場合などはパートナーとの話し合いができていなかったり、費用面で心配があったりと、悩んでしまう方も少なくありません。
しかし、妊娠週数が進むと手術のリスクや経済的な負担は大きくなっていってしまいます。
「出産しようか、中絶手術を受けるか迷っている」「中絶費用はどうやって用意しよう」「パートナーに相談したほうがいいのか」など考えることはいくつもありますが、これらは病院を受診したあとでも考えられることです。
まずは早めに病院を受診し、本当に妊娠しているのかどうかや、妊娠週数を確かめましょう。
この記事では、中絶手術の基礎知識や手術を受けるタイミング、手術の流れなど、中絶手術について詳しく解説します。
Contents
人工妊娠中絶手術とは
人工妊娠中絶手術とは妊娠の状態を意図的に中断するための手術のことで、日本では下記のような母体保護法による条件付きで認められています。- 妊娠や分娩が身体的・経済的理由で困難な場合
- 暴行や脅迫によって拒絶できなかった性交による妊娠の場合
中絶手術は医師であれば誰でもおこなえるわけではなく、母体保護法が指定する資格を持った医師のみに限られます。この資格を有する医師が「母体保護法指定医」です。
中絶手術を受けるのであれば、必ず各都道府県の医師会が指定する母体保護法指定医が在籍する病院を受診するようにしましょう。
過去には母体保護法指定医の資格を持たない医師による中絶手術によって女性が死亡してしまったケースもあるため、くれぐれも注意してください。
人工妊娠中絶手術を受けるタイミングについて
中絶手術はいつでも受けられるわけではなく、母体保護法によって中絶手術が可能な時期が「妊娠22週未満」と決められています。このため、中絶手術は妊娠21週6日までにしかおこなうことができません。なお、妊娠22週を過ぎた場合でも、なんらかの理由によって母体の生命が危険にさらされた場合などは、医療行為によって妊娠を中断させることもあります。(このような場合は中絶ではなく自然死産となります)
中絶手術は、妊娠週数によって「初期中絶」と「中絶手術」に分けられます。
妊娠11週6日目までの場合は初期中絶、妊娠12週~21週6日目までの場合は中期中絶となります。
初期中絶と中期中絶
中絶手術は、早い段階でおこなうほど手術のリスクを下げることができます。妊娠10週を過ぎるとお腹の中の胎児はどんどん大きくなりますが、それに比例するように中絶手術の難易度と母体への負担は大きなものへと変わっていきます。
母体への身体的な負担や精神的な負担、経済的な負担など少しでも軽くするためにも、中絶手術をおこなうのであればなるべく早く手術を受けることが大切です。
日本では妊娠12週を超えて中絶手術をおこなう場合(中期中絶の場合)、死産届を提出しなければなりません。そのため妊娠11週6日目までに中絶手術を受けることが多くなっています。
また、日帰りで手術できる初期中絶は入院の必要はありませんが、中期中絶の場合は入院が必要になります。
中期中絶の手術は入院設備が整った病院でしか受けられず、初期中絶のみしかおこなっていない病院もあるため事前に確認しておきましょう。
初期中絶 | 中期中絶 | |
---|---|---|
妊娠週数 | 妊娠11週6日目まで | 妊娠12週~21週6日目まで |
手術方法 |
|
人工的に陣痛を引き起こすことで、出産と同じような形で死産として取り出す方法 |
費用 | 10万円〜14万円ほど ※妊娠週数によって異なる |
45万円ほど |
手術時間 | 20分ほど | 術前処置をおこなう必要があり、1日以上かかる |
入院 | 日帰りで手術可能なため入院の必要なし | 3日〜7日ほどの入院が必要。(入院設備が整った医療機関でのみ手術可能) |
痛み | 静脈麻酔による麻酔でおこなうため手術中の痛みはない | 通常の出産と同様の痛みがある |
死産届 | 不要 | 区役所へ死産届の提出が必要 |
埋葬 | 不要 | 埋葬が必要(埋葬許可証の取得) |
いつから中絶手術を受けられる?
中絶手術は妊娠4週目以降で妊娠反応があり、病院での検査でも異常が見られない場合であれば受けることができます。ですが妊娠4週目や5週目では子宮頸管がとても硬く、中絶手術での子宮頸管拡張操作も非常に難しくなるため、妊娠6週目〜9週目に初期中絶の手術をおこなうのが母体にかかる負担やリスクが少ない時期だと言われています。
ただし、心臓疾患などの大きな病気がある方、帝王切開を受けたことがある方など、中絶手術にリスクがあると考えられる場合は小さな病院では手術が難しいケースもあります。
持病などがあり心配な方は入院設備の整った大きな病院を選ぶほうがいい場合もあります。まずは一度、病院へ足を運んで医師に相談してみるといいでしょう。
妊娠週数がわからない場合
自分の妊娠週数がわからない場合は、「最終月経日」から計算することで妊娠日数・妊娠週数がわかります。【妊娠日数・妊娠週数の計算方法】
- 最終月経日開始日を妊娠0日目として、当日までの日数=妊娠日数
いつも月経が来る予定日から4、5日ほど、月経不順の方の場合でも2週間ほど経過しても月経が来ないようであれば妊娠の可能性が考えられます。
予定日から1週間ほど経てば市販の妊娠検査薬を使って自分で検査することも可能ですが、妊娠検査薬の使い方によっては正しい結果が出ないこともあるため産婦人科を受診しましょう。
人工妊娠中絶の手術法
中期中絶の場合は通常の分娩の同じような形ですが、初期中絶の場合は「手動真空吸引法」もしくは「掻把法(掻爬法/ソウハ法)」と呼ばれる2種類の手術方法があります。
なお、日本でも「経口中絶薬」が2021年内をめどに承認申請される見通しです。審査で認められれば、手術が不要の中絶という選択肢も選べるようになることになります。
経口中絶薬は「ミフェプリストン」と「ミソプロストール」という2つの薬を順番に飲むことで妊娠を中断し、胎児や胎盤を排出させる薬で、日本ではほとんど知られていませんが世界では70カ国以上の国で承認されています。
手動真空吸引法(MVA)
手動真空吸引法は現在の日本でおこなえる中絶手術の中では、もっとも安全で少ない負担でできるとされている手術です。やわらかい使い捨ての器具を使うため子宮内膜を傷つけてしまうリスクがなく、安全に、清潔に手術をおこなうことができます。また、痛みも少なく済みます。
日本でこの方法が認可となったのは2015年のことですが、世界的にはもっとも推奨されている中絶手術方法です。
掻把法(掻爬法/ソウハ法)
掻把法(掻爬法/ソウハ法)は日本ではこれまで一般的だった方法で、手術前に子宮の入り口を開く処置をしてから鉗子やキュレットなど金属製の手術器具を使って、子宮の中から胎児と胎盤を取り出します。医師が子宮内の状態を把握しやすいなどのメリットがありますが、医師の技術が不足していた場合、母体に傷をつけてしまうなど深刻なリスクが起こる可能性もあります。
人工妊娠中絶手術の流れ
ここからは中絶手術の流れをご紹介します。なお、中絶手術をおこなう際は下記のような書類が必要です。- 同意書
- 保険証や免許証などの身分証明書
- 保護者の同意(未成年の方の場合)
1:事前準備(手術前日)
中絶手術開始の6時間から7時間以上前から絶食・絶飲をおこないます。水、ガムやアメ、常用薬、喫煙などもすべて禁止です。
2:術前処置(手術当日)
妊娠7週を超えている方の場合のみ、手術2時間前に子宮の入り口を安全に拡張する器具を入れる術前処置をおこないます。なお、痛みはほとんどないため、心配ありません。
3:検査
安全に中絶手術をおこなうため、アレルギーや体質などについての問診、常用薬の確認、血液検査などの検査をします。4:手術
初期中絶の場合の手術時間はおよそ20分で、静脈麻酔によって手術をおこなうため手術中の痛みはありません。生理痛が非常に重い方や、子宮の曲がりが強い方は手術を受けた後に生理痛のような痛みを感じることもありますが、時間の経過によって痛みは軽くなっていきます。
5:手術後について
麻酔から覚めたら、その日のうちに帰宅することができます。手術後1週間から2週間ほど、個人差もありますが生理のような出血が起こることがあります。人工妊娠中絶手術の費用
中絶手術の費用は自費診療となるため、産婦人科によってもかかる費用は異なります。費用相場は10万円〜14万円ほどで、妊娠週数によって変動します。
すでに記事でもご紹介の通り、中絶手術を受けるのであればなるべく早めにおこなう必要があります。
患者さんの負担を考えて初診料・カウンセリングや相談・検査費用を無料としている産婦人科もあるため、経済的な負担が気になって相談に行けないという方は初診料のかからない産婦人科を選んで早めの相談をするようにしましょう。
人工妊娠中絶手術の後遺症(不妊の心配)
「中絶手術を受けることによって今後妊娠しにくくなってしまうのでは?」と心配される方も少なくありません。昭和の頃におこなわれていた中絶手術では、子宮の損傷や感染などの合併症が多く、不妊の可能性も考えられたといいます。
しかし、現在では最新の医療機器と手術方法により安全に中絶手術がおこなえるため、不妊になってしまうような合併症はほとんどありません。
安心して中絶手術を受けるためにも母体保護法指定医が在籍する経験豊富な病院を選ぶようにしましょう。
まとめ
中絶手術は、妊娠11週6日目までの「初期中絶」と妊娠12週~21週6日目までの「中期中絶」では中絶手術の方法が変わり、妊娠週数が進むと身体や精神にかかる負担だけではなく、経済的な負担も大きくなります。また、子宮外妊娠は見逃すと命にかかわることもあるため、出産するか中絶手術を受けるかに限らず「妊娠の可能性がある」と考えられる場合には早めに産婦人科を受診することが大切です。
病院を受診する際には「周囲の人にバレてしまわないか?」という不安をお持ちの方もいらっしゃると思いますが、病院には守秘義務があるため問い合わせがあったとしても診療内容を答えることはありません。
不安な方はしっかりとプライバシーに配慮している産婦人科を選ぶのがおすすめです。
誰にも相談できないという方は、信頼できる産婦人科を見つけて医師に相談するのもいいでしょう。「もっと早く病院を受診していればよかった」と後悔しないよう、早めの受診を検討してください。