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公開日:2021/04/21
最終更新日:2021/04/21

中年期女性と閉経に関して

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中年期は一般的には40~60歳の間を想定しますが、人によっては大きく個人差が出ます。女性においては、生殖可能期の終盤から更年期、閉経期、老年期の始まりが中年期に含まれます。
 
このページでは、女性の閉経期に関して詳しく解説していきます。

閉経期の避妊と性感染症対策

日本では、40代女性の妊娠中絶率が他の世代よりも高いデータが出ています。40代になると妊娠確率は非常に低くなりますが、このデータにより閉経するまで避妊が必要である認識が、広く定着していないことがわかります。避妊は閉経までは継続する必要があります。
 
また日本では、避妊の方法はコンドームが一般的です。そのため避妊の必要がなくなると性感染症に対して無防備になってしまいがちです。
 
中年期の避妊法は、4つが挙げられます。
1つ目は、低用量ピル。この方法は最も確実な避妊方法です。2つ目が子宮内避妊具。こちらも非常に確実性の高い避妊方法です。ただ子宮内避妊具は子宮筋腫などの合併症で有効な場合と不都合な場合があるので、婦人科医と相談しながら利用するのがおすすめです。
 
3つ目がコンドーム。ピルや子宮内避妊具と比較すると避妊する上での確実性は低くなりますが、性感染症予防には有効です。中年期の場合は元々の妊娠確率が低いため、有効な方法です。そして4つ目に挙げられるのが、基礎体温法や月経周期で安全日を知る方法。この年代では月経周期は不規則になりがちなので、安全日はないと考えた方が良いでしょう。

更年期障害

更年期とは、閉経前後の2~5年の間の期間を指します。平均年齢は51歳ですが、個人差によって5年近く前後します。
 
更年期の時期にはのぼせや自律神経失調症、いらいらやうつなどの精神症状が起こる女性が多く、これらを更年期障害と呼びます。

更年期女性のホルモン療法

女性ホルモン補充療法(HRT)は、更年期の症状を緩和するだけでなく健康維持や健康寿命を伸ばすことにも有効だとされています。
 
特に、血管運動神経症状(のぼせ)や萎縮性腟炎、性交痛の治療、骨粗鬆症の予防や治療には有効性が極めて高いとされています。

性ホルモンに関して

女性ホルモン(エストロゲン)は生殖には必須のホルモンで、性的興奮時の潤滑剤を出す役割や、腟内のphや清浄度を保ち、性行為をスムーズに行える状態を維持するために必要です。その他にも全身の皮膚を正常に保つ効果もあり、閉経後の腟粘膜や外陰の皮膚萎縮改善が期待できます。
 
更年期へのHRTにはエストラジオール製剤が用いられることが多いですが、腟粘膜や皮膚への効果を期待するならエストリオールの方が高くなります。
 
性的興奮や性欲に関係するのは、男性ホルモン(テストステロン)です。テストステロンは卵巣から分泌されて、閉経によって消滅するので、HRTには女性ホルモンだけでなく、男性ホルモンも必要とされています。
 
しかし、男性ホルモン(テストステロン)の効果は個人差が大きく、適切な指標が示されていません。男性に使われるテストステロン軟膏製剤を10分の1だけ使用する方法もありますが、副作用もあるので医師とよく相談した上で、慎重に使用する必要があります。

閉経後の性交痛の対処法

閉経後にエストロゲンが欠乏して腟粘膜が萎縮し、性的に興奮しても分泌液が出なくなると、性交痛が起こります。性交痛が起こると性欲は低下しがちになり、セックスレスに発展してしまうおそれもあります。対処法には、主に5種類の方法があります。

ホルモン補充療法(HRT)

腟萎縮の改善には、エストリオールが第一の候補となります。他の薬と併用する必要がなく、副作用が少ない特徴があります。

潤滑ゼリー

ホルモン補充療法が行えない人にとっては、腟潤滑をよくできる潤滑ゼリーは特に有効で、必須のアイテムになります。乾燥した粘膜や皮膚に使用するため、なるべく刺激の少ないものが望ましいとされています。

PDE5阻害薬

男性の勃起機能改善に有効とされているPDE5阻害薬は、腟周辺の血行を良くして潤滑駅を流出させる効果が期待できます。しかし、日本では女性に対して処方ができません。

エストロゲン禁忌の場合

乳がんや子宮内膜がんの場合、エストロゲンは禁忌となります。そのため潤滑ゼリーや代替療法は必須とされています。
 
しかし、エストリオール腟坐剤やエストラジオールとテストステロンの併用は、乳がんに関しては再発に影響しない報告もあります。
 
また、エストラジオールは、更年期障害の治療だけでなく、健康維持のために有益であることが認められたので、エストロゲン感受性がんの場合でもHRTを行えるようになりました。

適切な性行為

明らかに外陰が萎縮している場合でも、性交痛がない高齢女性も中にはいます。これはつまり、腟萎縮が合ったとしても、強い性的興奮が得られれば潤滑液が流出することはあるということになりま。
 
潤滑ゼリーやHRTはもちろん有効な手段ではありますが、女性とパートナーが心から楽しんで、性的興奮が得られるかどうかが重要であることを改めて意識する必要があります。

まとめ

今回は、中年期、閉経期のセクシャリティに関する治療法を、主にホルモン療法を中心に解説しました。閉経するとエストロゲンが欠乏し、腟潤滑液が出にくくなることから性交痛やセックスレスに陥りがちです。
 
ホルモン療法で高い効果が得られるだけではなく、潤滑剤を利用することで性交痛は改善しやすくなるでしょう。
 
参考文献
1)日本酸婦人科学会、日本女性医学学会 編.ホルモン補充療法ガイドライン2017年度版日本酸婦人科学会 東京 2017

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