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公開日:2019/07/15
最終更新日:2021/05/19

産婦人科医の八田真理子先生がオススメする【腟トレ】

記事監修

八田 真理子
聖マリアンナ医科大学医学部
日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本女性医学学会専門医、日本抗加齢医学専門医

投稿日:2019年7月15日 更新日:

産婦人科医の八田真理子先生がオススメする【腟トレ】
女性特有の疾患として知られる子宮脱(骨盤臓器脱)は出産を経験した女性に多く見られ、腟から子宮や膀胱、腸などの臓器が出てきてしまうことでさまざまな症状が生じます。
欧米で行われた調査によれば、出産を経験したことのある女性のおよそ40%に骨盤臓器脱の症状が見られたというデータがあるほど、よく見られる疾患です。
しかしながら、腟というデリケートな部位に症状が現れる疾患であることからなかなかクリニックに足を運ぶことができないという方も多いようです。
ですが、骨盤臓器脱は何もしないまま放置してしまうと悪化してしまうこともあり、症状が進行すれば日常生活に支障が出てしまうこともあります。
子宮脱(骨盤臓器脱)は「骨盤底筋体操」や「骨盤底筋ヨガ」などのトレーニングを行うことによって改善できるケースもあります。この記事では骨盤底筋体操や骨盤底筋ヨガのやり方などについてご紹介します。
骨盤臓器脱にお悩みの方はもちろん、骨盤臓器脱を予防したいという方もぜひ記事を参考にしてみてください。

子宮脱(骨盤臓器脱)は悪化すると日常生活に支障が出てしまう

骨盤臓器脱は初期の状態では、下腹部の違和感や腟の中から何かが下がってくるような感覚を感じることが多いようです。
重症度は4段階で、子宮が落ちてきて腟の入り口から1cmまで近づいている状態が第1度、子宮が腟の入り口のすぐ内側まで下がってくるのが第2度、第3度になると子宮が腟の外に飛び出してしまいます。
第4度は子宮全体が腟の外に完全に出てきてしまいます。子宮のほかにも膀胱や直腸、小腸が飛び出してしまうことがあり、飛び出してしまう臓器によって「子宮脱」「直腸瘤」などと呼ばれます。
腟の入り口ギリギリに臓器が迫ってきている初期段階の場合、違和感を感じる程度ですが、症状が少しずつ悪化してくると、トイレでおしっこをしても出し切った感じがしなかったり、排便でしにくくなったり、尿失禁や頻尿などが起こることもあります。
腟から臓器が出てきてしまうようになると、飛び出した臓器が乾燥したり、下着にすれて出血したりして歩くのが億劫になったり、家事が困難になるなど、日常生活に支障が出てしまうことになります。
生活の質が大きく低下してしまいかねないため、悪化してしまう前に対処することが大切です。

子宮脱(骨盤臓器脱)の自分でできる対処法

骨盤臓器脱を完全に治そうと思ったら、手術をするしかないと言われています。しかし、根治治療はできないものの、自分でできる対処法もあります。
骨盤底筋体操や骨盤底筋ヨガなどと合わせて、これからご紹介する対処法を行ってみるのもいいでしょう。

慢性疾患への対処

子宮脱(骨盤臓器脱)を引き起こす一番の原因は出産だと言われていますが、そのほかにも慢性の咳や慢性の便秘なども原因の一つです。
咳をするときや、便秘で力むときはお腹に力が入りますが、この腹圧が骨盤臓器脱を引き起こしたり、症状を悪化させてしまう原因となっています。
これらの慢性疾患を改善することで、骨盤臓器脱を予防したり、すでに症状がある場合は悪化を防ぐことができます。

重たいものを持たないようにする

子宮脱(骨盤臓器脱)は、重たいものを持つ仕事をしている女性や、介護をしている方にも見られる症状です。
重たいものを持ち上げるときは腹圧がかかるため、なるべく重たいものを持たないようにするなどの工夫をしましょう。
とはいえ、介護などどうしても避けられないこともあるかと思いますので、その場合はクリニックに足を運んで、ドクターに相談してみましょう。

体重を増やさないようにする

太ると体重が重くなりますが、これも腹圧をかけてしまう原因となります。
骨盤臓器脱の症状が進行しないように肥満にならないよう注意したり、太ってしまっている方はダイエットしたりするのもおすすめです。

指で押して引っ込める

子宮脱(骨盤臓器脱)になると、トイレでおしっこをするときなどに、腟から臓器が出てきてしまうことがあります。
このとき、触ると衛生的に良くない、触ってはいけないと思ってしまいがちですが、出てきたまま放置しておくほうが乾燥したり、汚れたり、血流が悪くなったりしてさらに症状が悪化してしまいます。
腟から臓器が出てきてしまったときは、指を使って優しく押して中に引っ込めるようにしましょう。引っ込めることで排尿もしやすくなります。

骨盤底筋体操

骨盤底筋とは、骨盤の中にある子宮や膀胱などの臓器を支え、下に落ちてこないようにしている筋肉や靭帯のことです。
この骨盤底筋は、出産のほか、慢性の咳や便秘によってかかる腹圧、加齢、手術、肥満などさまざまな原因によってダメージを受けて緩んだり、損傷してしまいます。
骨盤底筋体操や骨盤底筋ヨガは、そんな臓器を支えている骨盤底筋を鍛えることができるトレーニングのことです。
立ったままでも、寝ながらでも、椅子に座ってでもできるので、手軽に骨盤臓器脱を予防することができます。

骨盤底筋体操のやり方

それではここからは、骨盤底筋体操のやり方をご紹介します。1回につき、5秒から10秒ほど行いましょう。
立ってるときは「つま先立ち」、座っているときは「椅子に浅く腰掛けて」、寝ているときは「仰向けで足を肩幅に開いて、少し膝を立てる」このような状態で骨盤底筋体操を行ってみてください。
  1. 腟と肛門をきゅっとすぼめるようなイメージで締めましょう
  2. 力を込めてぎゅーっと締めながら、頭のほうに骨盤底筋を引き上げていきましょう。このとき、5秒から10秒数えましょう。
  3. 締め続けながら3回、さらにぎゅっと固く腟と肛門を締めましょう
  4. 力を込めたのと同じだけ休んでから、繰り返します
骨盤底筋体操は10回を1セットとして、1日に5セットは行うようにすると効果的です。すぐに効果が出るわけではありませんが、2ヶ月から3ヶ月ほどコツコツ続けていると効果が現れてきます。
クリニックなどに受診すれば、専用の機械を使用して調べることができるバイオフィードバック療法と呼ばれる治療法や、専門家による指導を受けることも可能です。
骨盤底筋体操をしばらく続けているのにまったく効果を感じられないという場合はやり方が間違っている可能性もあるため、クリニックに行ってドクターに相談してみるのがおすすめです。
腟や肛門に力を入れて締め上げるだけなので、いつでもどこでも自分のタイミングでできる体操です。気づいたときに行うようにするなど、生活に取り入れるようにしましょう。

子宮脱(骨盤臓器脱)に効果的な骨盤底筋ヨガのやり方3つ

骨盤底筋体操のほかにも、骨盤底筋ヨガといって、骨盤臓器脱に効果的なヨガもあります。
ここからは骨盤底筋ヨガのやり方を3つご紹介します。クリニックによっては骨盤臓器脱や尿失禁にお困りの女性のために、メディカルヨガ教室などを行っているところもあります。
すべてのポーズを必ずやらないといけないわけではないので、できるポーズを毎日コツコツ継続して行うことが大切です。

ワイドスクワット

大きく足を広げて行うスクワットで、骨盤底筋だけにアプローチできる骨盤底筋ヨガです。
  1. 肩幅よりもさらに広く足を開いて立ちましょう
  2. 骨盤底筋を引き上げるイメージをしながら呼吸しましょう
  3. 会陰のあたりを身体の内側のほうに引き込むようにし、息を吐きながら腰を落としていきましょう
  4. 深く膝を曲げて腰を沈め、太ももと床が平行になる状態で9秒キープ

フロッグライズ

骨盤底筋を直接刺激することが可能なヨガのポーズです。
  1. 肩幅よりもさらに広く足を開いて立ちましょう
  2. 両方の膝を少し曲げて、左右の足の親指を左右の手の人差し指と中指で握りましょう。このとき、目線は下で、背中は丸めてください
  3. 息を吐きながら両足を伸ばしましょう
  4. 骨盤を前に方向け、お尻は突き出します。このとき、目線は正面に向けてください
  5. 呼吸をゆっくりと繰り返し、息を吐くときに会陰のあたりが身体の内側に入るような感覚を感じつつ9秒キープ

ドルフィンツリー

ドルフィンツリーはお尻に力を入れるので、ヒップアップ効果もある骨盤底筋ヨガです。
  1. 気をつけの姿勢で立ちましょう
  2. 左右の膝の内側と両足のかかとをくっつけて、足先は開きます
  3. 斜め上に両手を上げて開きましょう
  4. つま先立ちをして、そのままの状態でお腹とお尻に力を入れて9秒キープ。このとき、膝の内側はくっつけたままにしてください

腟のゆるみ防止に効果のある「腟トレ」

自然と腟を引き締めるトレーニングを行っていた、昔ながらの生活に戻ることは難しいのが実際ですが、腟を引き締めるための筋トレを行って、腟のゆるみを予防することもできます。先に挙げたような項目が当てはまる方は、腟のゆるみを予防する「腟トレ」をぜひ実践していきましょう。
「腟トレ」は、退化しやすく、出産でも傷つきやすい骨盤底筋を鍛えるためのトレーニングです。このトレーニングによって骨盤底筋の筋肉量が増加すると、腟が引き締まるだけでなく、性機能の高まりや性交の際のうるおいも増すことに。女性・男性ともに性的な満足度が高まるのです。
 
また、「腟トレ」によって筋肉を鍛えると、子宮や膀胱といった臓器を支えられるため、排泄機能をコントロールできるようになります。これが、尿漏れ防止や便秘・生理痛・下痢などの解消に。血液を送り出すという筋肉のポンプ機能も向上し、骨盤内の血流が増え、多くの女性が悩んでいる「下半身の冷え」解消にもつながるのです。
 
さらに、骨盤底筋が連動している横隔膜や多裂筋、腹横筋などのインナーマッスルも鍛えられるため、正しい姿勢になるといったメリットもあります。

腟トレを実践しよう①オイルマッサージ

用意するもの:オイル約20cc(スキン用セサミオイル、スキン用スイートアーモンドオイル、アーユルヴェダ−オイルのいずれか)、バスタオル
※オイルは酸化していないフレッシュなものを必ず使用します。グリセリン(石油由来)、ベビーオイル・ワセリン(ミネラルオイル)は使用しないでください。事前にアレルギー反応がないか、パッチテストで確認してください。

1.「腟トレ」の準備

デリケートゾーンをさわることになるため、まずは手と爪を清潔にしましょう。爪は短く切っておきしょう。

2.腟内に指を入れて開く

お風呂でカラダを温めたら、オイルをたっぷりつけた人差し指をゆっくりと腟内にいれてください。
※全く入らないときは、入り口付近をマッサージして終了します。
 
腟に第2関節くらいまで指が入りましたら、時計の9時から12時を通り、3時までの範囲の全体を押します。次に3時から6時から9時の範囲は指を親指に入れ替えて腟のお尻側を押してみてください。
 

3.息を吐きつつ腟を引き締め、指を閉じる

腟に指を入れた状態でできるだけ身体をリラックスさせ、息を吐きつつ腟と肛門を引き締めます。腟に入れた指を閉じて、引上げ、そのまま5秒から10秒維持しましょう。これを1日に10回行うことで、腟のゆるみを予防できます。
 

腟トレを実践しよう②骨盤底筋トレーニング

1日3分時間作って「腟美人」になりましょう

  1. 足を肩幅に開いて立つ。
  2. ゆっくりと息を吸いながら(約5秒)、腟を引き上げるようなイメージで肛門周辺を締めていく。限界まで締めたら息を止め、締めたまま5秒間キープする。※トイレで尿を止めるときの感覚。
  3. 息を吐きながらゆっくりと腟をゆるめていき(約5秒)、もとの状態に戻る。これをまず、5セットを目安に毎日行ってみましょう。

腟トレを実践しよう③骨盤底筋群トレーニング

  1. かかとを合わせて足を90度に開いて直立します。
    ※右手か左手はテーブルに添えられる場所で行うと良いです。
  2. 腰は丸めずに、背筋を伸ばして両かかとをつけて、つま先を少し外(90度)に開きます。呼吸をしながら膝をつま先に方向に曲げます。当息を吐きながらゆっくりと腟をゆるめていき(約5秒)、もとの状態に戻る。これをまず、5セットを目安に毎日行ってみましょう。
  3. ゆっく膝を伸ばしながら、腟の引き込み(肛門周辺を締めるイメージで)両足の内側をつけます。
    これを5回〜10回繰り返します。

腟トレを実践しよう④骨盤底筋群トレーニング

  1. 両足を揃え、姿勢良く直立姿勢になってください。また手をお尻をお腹に当ててください。
  2. 1の姿勢をキープして、腟と肛門に力をギュッと締めてください。
    締めたり、緩めるのを3回繰り返してください。締めるときに息を吐いて、緩めるときは息を吸ってください。呼吸を意識することで、より骨盤底筋に効かせることができます。
  3. 次にゆっくり息を吐きながら、腟と肛門を10秒かけて強い力でギューと締めてください。また再び10秒かけて強い力で緩めるを3回繰り返してください。手を当てているお腹とお尻を意識しながら骨盤底筋をゆっく引き上げるイメージでお願いします。

骨盤底筋を鍛える「ピフィラティス」を実践しよう①

2018年4月13日放送のTBS系『ビビット』で放送!

骨盤底筋を鍛えるという「ピフィラティス」は、ピラティスをベースにアメリカの著名な医師が考案したエクササイズのことです。骨盤底筋に加えて、腹横筋やお尻の筋肉、太ももの筋肉なども鍛えられるため、ウエストのくびれ作りやヒップアップにも効果があります。このエクササイズを継続し、腟のゆるみを改善していきましょう。

足の前後運動方法

1、腰の幅に足を開いて姿勢よく立ちます。
2、腰に手を当ててリラックスしてください。
3、息を吸うと同時に足を大きく前に一歩踏み出します。
4、息を吐くと同時に足を元の位置に戻します。
5、3回繰り返してください。3回目には3秒足を止めてください。
6、終わりにに息を強く3回(ハッハッハッと)吐いてください。

寝ながら(横向き)運動方法

1、背中を伸ばすようなイメージで姿勢良く横になってください。
2、足と腰が90度になるように曲げてください。
3、息を吸うと同時に足を上にあげた後下げてください。
4、3回同じ動きをしたら3回目で足を止めます。
6、終わりに息を強く3回(ハッハッハ)と吐いてください。
逆側の足も同じように1から6を繰り返してください。

腟トレに関連する記事について

構造医学から見る【腟トレ】の方法について【監修:鍼灸師:柔道整復師 林利浩先生】
 

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