生まれつき子宮もしくは腟を持たない遺伝性疾患―ロキタンスキー症候群

投稿日:2019年9月14日 更新日:

「ロキタンスキー症候群(MRKH: Mayer Rokitansky Küster Hauser)」は、女性の約4,500人に1人の割合で生じる先天性異常です。

 

子宮と腟の一部もしくは全部の欠損が見られるというもので、見た目からは判断がつきません。原因は、女性内性器へと発達するMüller管の、胎児期における分化異常にあるとされていますが、はっきりとはわからないままです。

 

卵巣・卵管は正常に機能しているため、女性ホルモンの分泌や排卵などに問題はありません。しかし、月経は起こりません。月経が起こるべき年齢になってもに初潮がこないといった相談で病院を訪れ、自分がロキタンスキー症候群であることがわかるといったケースが多数見受けられます。

 

また、ロキタンスキー症候群の患者の約3割が腎欠損、馬蹄腎、椎体異常、多指症、直腸肛門奇形などの症状を起こすため、新生児から乳幼児期にかけて、合併症を精査する過程で発見されるケースもあります。

ロキタンスキー症候群の女性が抱える苦しみ

約4,500人に1人の割合で生じるとはいえ、その先天性異常を抱える女性の苦しみは世間で認知されているとはいえません。

 

ロキタンスキー症候群では、性ホルモンには何の問題もありません。先天性異常があるとはいえ、その患者たちは、他の女性と同様の想いと希望を持っています。子どもを授かりたいという願いは、その最たるものといってよいでしょう。

 

しかし、ロキタンスキー症候群の女性には、排卵があっても月経出血がありません。卵子と経血は身体に吸収されていきます。自分では妊娠することができず、子どもを授かりたいなら、代理母という手段を選択するしかないのです。

 

また、国や地域のよっては、自分の症状についての正確な知識や支えが十分に得られない可能性もあります。十分な情報が得られないことで、性交渉などで痛みを覚えつつも我慢せざるをえなかったり、満足に育たない子宮に外的な損傷を負ってしまったりします。さらに、治療法を自分の意思で選択できない、十分に納得したうえで治療を受けられないといった問題も生じるでしょう。

 

精神的なフォローアップを受けられないことで、身体の痛みと同様、心の痛みを感じるのです。生理がこず、自分の子どもを授かれないことで、自分は成熟した女性でない、まるで子どもだ感じる人も少なくありません。さらに、子どもを産むことが女性の主要な務めとみなされる国では、ロキタンスキー症候群であることで、家族から排斥されてしまうといった問題も起こります。

 

さらに、国によっては、膣造成術が美容整形とみなされることがあります。保険が適用されず、莫大な費用が必要とされるため、金銭的な問題から治療をあきらめる人も存在するのです。

ロキタンスキー症候群でも子どもを持つという選択

ロキタンスキー症候群の女性は、卵巣機能が正常に機能しているため、代理懐胎や子宮移植といった選択も可能です。また、遺伝子がつながらないかたちでも、特別養子縁組などで子どもを授かることができます。

 

しかしながら、日本ではまだ、代理懐胎が許容されていません。また、海外では症例のある子宮移植なども、日本では行われていないのが現状です。

 

 

 

ロキタンスキー症候群の治療における選択肢

日本におけるロキタンスキー症候群の治療法には、いくつかの選択肢があります。

・腟の入り口を器具を使って圧伸していくFrank法

・腹膜を用いて造膣するDavydov法

・大腸の一部を切除したものを膣として用いるRuge法

・腹部もしくは大腿部などから採取した皮膚を腟として用いるMcIndoe法

・人工真皮を用いて造膣するMacIndoe変法

造腟手術を受けるまでの流れ

造腟術を受けるまでに、内診や超音波検査、卵巣ホルモン検査などを受け、ロキタンスキー症候群という診断が行われます。さらに、手術に至るまでに、器具を用いて腟の長さを伸ばせるかどうかを確かめる必要もあります。

 

ここでは、腟の入り口に器具を押し当てながら、膣の長さを保てるように圧迫していきます。この圧迫に1日に20分程度を費やしますが、これでも十分な長さが保てない場合、造膣術を行う必要があるとの診断がくだることになります。

 

しかし、造腟術は性行為を可能にするための方法であり、ロキタンスキー症候群の患者が必ず受けるべきものではありません。造膣術を受けるかどうかを判断する際は、ご自分でじっくり考えることが大切です。

 

手術を受けると決めた場合でも、急いで手術する必要はありません。手術を受けるのにまとまった休みをとりやすい時期、異性とのお付き合いを始める前にといった具合で、自分の都合のよいタイミングを見計らったうえで、医師に相談してみてください。

膣形成術のひとつDavydov法(ダヴィドブ法)とは

ダヴィドブ法は、骨盤腹膜を膣粘膜の代わりとしても用いる治療法のこと。腟からのアプローチに加えて、腹腔鏡を用いたアプローチを行うのがダヴィドブ法の特徴です。

 

ダヴィドブ法を用いて造膣した場合は、術後に造腟した腟を閉じさせてしまいません。手術の折、膣内にプロテーゼという器具を挿入し、腟を閉じさせないための予防策を講じます。膣内のプロテーゼが原因で排便しにくいときには、排便のときだけプロテーゼを膣から取り除くことも可能です。自分自身でプロテーゼの抜去や再挿入ができるよう、術後2日目ごろから指導を受けますが、入院中はずっとプロテーゼを挿入したままです。

 

日本では、ダヴィドブ法による治療を受ける場合、保険診療3割負担の方で、約25万円前後の治療費がかかりますが、高額療養費制度による医療費の払い戻しを受けられます。

ダウィドブ法のメリット

皮膚移植や人工真皮などを用いた造膣術の場合は、皮膚を採取下部分が瘢痕化してしまったり、腟が上皮化するまでに時間がかかることがあります。

 

しかしダヴィドブ法の場合は、腹膜を用いて腟を形成することで、腟入口部の狭窄や腟腔の狭小化、短縮といった問題の発生を抑えることができるといったメリットがあります。さらに、プロテーゼを挿入する期間が少なくてすむというのもダヴィドブ法の大きなメリットです。

 

術後の経過にもよるため、個人差がありますが、入院期間はおよそ10日ほど。退院後、1週間ほどの安静療法ののち、仕事に復帰できます。

 

術後の流れ

退院後は、定期的に受診しながら、腟が閉じてしまっていないか、膣の上皮が再生しているかどうかを確認します。

 

術後1ヶ月は、1、2週間に1度、術後2ヶ月から半年までは月に1度の通院が必要です。術後半年たってからは、数ヶ月に1度の通院でかまいません。

 

ある程度状態が落ち着いてからも、膣が閉じてしまわないようにダイレーターを使用しますが、定期的な性行為があれば、ダイレーターをあえて使用する必要はありません。性行為は、術後数ヶ月たってから可能です。

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