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公開日:2021/04/21
最終更新日:2021/08/29

女性性機能障害に対する薬物療法【医師監修】

記事監修

丹羽咲江
名古屋市立大学医学部
日本産科婦人科学会産婦人科専門医,日本性科学会 幹事,日本性科学会認定セックスセラピスト

投稿日:2021年4月21日 更新日:

女性の性機能不全(female sexual dysfunction:FSD)には、薬物療法で効果が出るとされている治療は少ないとされています。また、その効果が出る薬が日本で使用できるものはさらに少なくなります。
 
そのためこの領域の薬物療法に関しては、手探りの治療にならざるを得ません。FSDは、大きく分けて性的関心/興奮障害、オルガズム障害、性器-骨盤痛・挿入障害の3種類に分けて考えられるとされています。

性的関心/興奮とオルガズムに関連するホルモン

性的関心/興奮障害とは、状況やイベントに関係なく、常に性的な関心が消失している状態です。そのため意識的に性行為を避けてしまう傾向がある上、性行為の最中でも関心を維持できなくなり、日常の中に性的な発想や妄想も一切起こりません。
 
性的関心/興奮障害は、ホルモンの補充による薬物療法を行います。エストロゲンは許容、テストステロンは起爆剤、プロゲステロンは感受性を高める作用があります。
 
その他にも、プロラクチンは性的意欲を抑制し、オキシトシンはオルガズムを強め、ドパミンとノルエピネフリンは性的興奮を活性化させて、セロトニンはドパミンとノルエピネフリンの作用を抑制する効果があります。これらのバランスが、女性の性的興奮を作用させます。

FSD(女性の性機能不全)診療の流れ

FSD診療を行うのに重要なのが問診です。FSDの原因が心理的な要因なのか、パートナーとのコミュニケーション不足やセックスの技能に問題があるのかを明らかにする必要があります。
 
もしパートナーとの関係性やセックスの技能に問題がある場合は薬物による治療はあまり意味がありません。患者とパートナーとカウンセリングを行い、間違った方法でのセックスを正し、関係性の修復を図る必要があります。
FSDが心理的な要因な要因だった場合はカウンセリングと行動療法、薬物療法を並行して進めます。また、この時にFSDを起こす可能性のある薬物を中止させる必要があります。
 
性的関心を低下させる可能性のある薬物は、抗うつ薬のSSRI・SNRI、低用量ピルです。SSRI・SNRIは、性的意欲を低下させるセロトニンを増やす効果があります。低用量ピルは、肝臓で作られる性ホルモン結合タンパクを増やすため、テストステロンの減少に繋がります。
 
この場合は血液検査を行い、甲状腺刺激ホルモン、乳汁分泌ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体化ホルモン、エストラジオール、プロゲステロン、フリーテストステロン、DHEA-Sの異常がないかを確認して、ホルモン補充療法の参考にします。

テストステロン(男性ホルモン)の少量投与

テストステロンが低下すると性欲が減少することは明らかになっています。そのため女性の性的関心/興奮障害には女性用テストステロンパッチを使用するのが効果的です。
 
女性がテストステロンを補充することによって、乳がんを増加させるリスクはありません。ただ、体毛の増加とニキビが副作用として考えられます。また、2.5~5%の確率で性器から出血する場合があります。
 
これにより、テストステロン療法は、性的意欲が低く、QOL患者の中で特に更年期以降で抑うつ気味の患者と、手術や他の疾患によって早期閉経、副腎疾患で性的意欲が落ちて抑うつ気味の患者に対して適切だと考えられます。
 
ただ、日本では女性用テストステロンパッチは認可されていません。日本で使用できるテストステロン製剤と後に解説するPDE阻害薬に関して以下の表にまとめました。
対象 保健 使用法
男性ホルモンの全身投与 性的関心/興奮障害 保険適用 ボセルモンデポー:
 
エストラジオール+テストステロンの合剤。2~4週間ごとに筋肉注射
男性ホルモンの全身投与 性的関心/興奮障害 非保険適用 グローミン:
 
OTCの男性ホルモン軟膏。女性は0.5~1gを1日1回使用
PDE5阻害薬の少量投与 オルガズム障害 非保健適用 レビトラ、バイアグラ、シアリス:
 
男性の2分の1から3分の1を投与する
 

テストステロン以外のFSD治療薬

オルガズム障害に関しては、PDE5阻害薬の使用が有効性があるとされています。男性の2分の1から3分の1投与することで、特に糖尿病や高血圧など、動脈硬化が進行している患者に対してオルガズムが改善する傾向にあります。ただ、血管障害のない患者に対しての効果は弱いとされています。
 
一方アメリカの食品医薬品局では、女性の性的意欲障害治療薬としてフリバンセリンが創薬されました。フリバンセリンは、ドパミンとノルエピネフリンを増加させて、セロトニンを減らす効果があるとされています。

性交疼痛症に対する薬物療法

閉経後に起こる腟萎縮症は、女性の50%に見られるとされており、最近では性器尿路症候群(GMS)と呼ばれるようになってきています。
 
性器尿路症候群は、腟乾燥、かゆみ、灼熱感、疼痛、性交疼痛などの症状を引き起こします。治療は潤滑剤、保湿剤、女性ホルモンの経外陰投与、女性ホルモンの全身投与によって行われます。
 
日本では女性ホルモンの全身投与に関して、エストロゲン+プロゲステロンの合剤を健康保険で使用できますが、経外陰投与は別です。健康保険で使用できるのはエストリールの経外坐剤のみで、世界的に使われているクリーム製剤は保健適用外となります。
 
感染症や接触性皮膚炎、さらにGMSの治療を行っても性交痛を訴える場合は、外陰通症候群としての治療を始めます。外陰通症候群とは、外陰や腟前庭部に診察上明らかな器質的疾患がないのに痛みがある症状のことを指します。
治療の第一は、生活習慣の改善となります。木綿や絹の下着を着用する。お
りものシートの常用を中止する。外陰部をゴシゴシと強く石鹸では洗わないこと。乗馬や自転車に乗ることを控える、などから始めます。
 
薬物療法としては、リドカイン外用、ステロイド軟膏、ボツリヌス毒素注射、アミトリプチリン、イミプチリン、SNRI、ガバペンチン、プレガバリンを用いることがあります。
 
また、薬物療法と並行して、リハビリ&リラクゼーションを行う必要があります。薬物療法が無効な場合は、レーザーや超音波による施術で腟のゆるみや粘膜萎縮を治療し、性交痛やオルガズム障害を治す試みもみられています。

まとめ

女性性機能不全は、行動療法やカウンセリングだけでなく、薬物療法を進めることで有効に進められるようになります。ただ、日本で使用できる薬は限られている場合が多いため、並行してセラピーやリラクゼーションを行うことが重要になります。
 

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