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公開日:2021/04/21
最終更新日:2021/04/21

周産期のセクシュアリティ

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妊娠は女性の人生やセクシュアリティに大変重要なものでもあるにかかわらず、尊厳を持って扱われないことで心身の不調を引き起こすきっかけとなります。特にパートナーにおいて、妊娠する側としない側では立場は著しく異なります。お互いの違いについて強調される出来事でもあることから、妊娠中や産後の性行動はすれ違いを生むきっかけにもなりやすいでしょう。これは同性愛だったとしても同様です。

妊娠への専門家の対応

妊娠、流産、異性妊娠、胞状奇胎、中絶、避妊、不妊、出産は、特別な感情を挟まずに対応することが望ましいです。本質的には女性の身体権を優先して対処をすべきで、未婚や学生であるなど、その他の要素を考えて判断を変えてはいけません。

 

妊娠はめでたい、中絶はいけないことといった価値判断も不要です。思想や信条、婚姻状態に関わらず、性に関わる権利は必ず守られるべきものであることを、専門家だからこそ肝に命じておく必要があります。

 

対応するセラピストやカウンセラーが自分の主義主張を患者に押し付けるのであれば、それは専門家ではなく一般人としての対応でしかありません。本人によってより良い選択肢を選ぶ支援をすることが重要です。

妊娠中のセックスの多様性

妊娠をしても男女ともに性欲が衰えるとは限らず、変わらない人や性欲が増す人もいます。ペニスの挿入にこだわる性交は時に困難ではありますが、性的行為は挿入に限らない行為であることを知る好機とも考えられるでしょう。

妊娠中の体位

妊娠初期には体位を気にする必要はありませんが、つわりや着床出血などの不安要素もあります。中期は安定期とも呼ばれ、つわりも収まってお腹の張りもあまりありませんが、下腹部の膨らみが始まる時期なので腹部を圧迫することだけは避けましょう。

妊娠後期はうつぶせになるのは不可能で、正常位での性交は困難です。女性上位や後背位など、体位を工夫することで性交ができます。

妊娠中の性交頻度

妊娠中の頻度に関しては特に決まりはありません。ただ妊娠中のパートナーだからこそ産後や子育てに必要なコミュニケーションが必要です。

妊婦検診や助産師外来では、妊娠中のセックスについて質問して良いことを伝えることが重要です。産後のセックスレスは、妊娠中からこういった情報提供をすることで緩和できる可能性が高くなります。

 

ただ妊娠中は、プロゲステロンとエストロゲンの低下によって腟潤滑が低下します。すると痛みを感じやすくなり、性反応が冷めやすくなります。妊娠前と同じようにするのではなく、新たな関係性築くつもりで行う必要があるでしょう。

 

性欲が起きなかったとしても、手をつなぐ、抱き合うなどの性欲ニーズのすり合わせを楽しむ工夫が重要です。

医学的課題とセクシュアリティ

周産期に関わる専門家は日常的に生と死に接していますが、感覚が一般の人とは違うをことを認識しておく必要があります。緊急帝王切開で妻が死にかけることをきっかけに勃起障害となってしまう男性もいますし、流産の不安から性交が出来なくなってしまう女性や、会陰切開や輸血の際にパートナーである男性がトラウマになってしまうこともあります。

 

死産などがパートナーに対する不満や性嫌悪に繋がってしまう場合もあります。

妊娠初期(妊娠4~13週まで)

つわりや妊娠初期の出血で、性交どころではないと考える女性も多くいます。そういった時に男性に身体を求められると不満に感じ、男女のすれ違いにもなります。しかし、医学的な理由もなく妊娠中だから性交してはいけないなどと決めつけてしまうのはセクシュアルヘルスを尊重しない考え方です。

 

妊娠の事実とつわりの開始で、女性は性交に対して特に消極的になります。また、妊娠中は子宮に行く血流が多く、子宮口や腟粘膜が脆弱で傷付きやすいので出血しやすい特徴があります。性行為をすることで流産することはまずありません。ただ、出血をすることはあります。

 

不妊治療の末の妊娠や、高齢妊娠、合併症のある妊娠などは、パートナーが大きな期待を寄せている分、過度に行動を制限したり、妊娠を封印したりする場合があります。

 

医療従事者側は、妊娠中に積極的に性交をするように勧めるのは勇気がいるのもですが、何を心配していてどの程度なら大丈夫であるのかを適切に伝え、納得してもらうことが重要です。

妊娠中期

胎盤が安定していない場合や、内子宮口に胎盤が付着している前置胎盤では、性行為による子宮収縮は避けなければなりません。そのため、性交は医学的な禁忌です。

 

性交が合ったかどうかでの早産は大きな変化が出ないため、早産リスクを理由に性交を禁止するのは望ましくありません。

妊娠後期

妊娠後期になるとお腹の張りや腰痛、浮腫や便秘などの不快症状が増え、性交には集中しにくい可能性が高くなります。オルガズムを起こすと子宮が収縮を起こすことからも不安に感じやすいでしょう。

 

ただ、愛撫としての全身マッサージや肩もみ、抱き合う、一緒にお風呂に入るなどといったスキンシップを楽しむことはできます。性交を挿入にこだわっていた場合は、年齢が上がって身体に不具合が生じても愛し合えることを知れるチャンスとなるでしょう。

産後

自宅で望まない限りは、産後は病院に入院することになります。近年は立ち合い出産が増加して、約半数が子どもの誕生を共に迎えていますが、場合によっては夫がトラウマになる可能性があります。

 

特に腟口や出血、会陰裂傷や切開創を見せるべきではありません。見たい場合は無理に隠すことはないものの、医療者側が感動的だと思っていても、本人の意思に反して見せる行為は暴力だと認識する必要があります。

 

産後は母乳によって性的な満足を得られることからなかなか性交には至りません。産後1ヵ月経つと女性の会陰は治癒していて性交しても問題はありませんが、違和感が残っている場合などは特に性交からは遠ざかりがちです。

 

多くは半年から1年の期間で元に戻りますが、産後セックスレスによって2人目不妊に陥ることもあります。産後のことを2人で話し合うなどして、新しい気持ちでやり直すなどの工夫が必要です。

流産,中絶後

流産の中でも不育症では、妊娠が怖くなることが多くなります。異所性妊娠や胎状奇児などの異常妊娠後も、性交には前向きになれない人が多いでしょう。そういった場合は、ピルを使って確実な避妊をした上で、妊娠しない性交を楽しみ、時間が経って受け入れられてからピルを止めるプランが有効です。

 

中絶の場合も心身を休める上でしばらくの間は避妊をすることを勧めます。

流産と中絶は、男性が思うよりも大きな心身のダメージがあることをきちんと伝える必要があります。パートナーがコンドームを使用して相手を労わることも重要です。

 

参考文献

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