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公開日:2019/03/22
最終更新日:2024/05/01

性交痛

執筆者

丹羽咲江
名古屋市立大学医学部
日本産科婦人科学会産婦人科専門医,日本性科学会 幹事,日本性科学会認定セックスセラピスト

投稿日:2019年3月22日 更新日:

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性交痛

Contents

性交痛のメカニズム

一般に「性交痛」と呼ばれるのは、セックスの際に感じる痛みを総称したものです。こうした痛みの原因はほとんど、腟内のうるおい不足にあります。しかしそもそも、女性器が「濡れる」というのは、どうしてなのでしょうか。
 
実は、女性の性的な興奮が高まるにつれ、下半身にはどんどん血液が流れ込んできます。それによって、腟壁周辺の毛細血管が拡張して血管壁を押し開き、その隙間から潤滑液がしたたるようになるのです。これが、女性器が「濡れる」メカニズムです。
 
腟潤滑液の分泌にかかる時間や分泌量は、人それぞれ。分泌しやすければよい、悪いというものではありません。その一方で、十分に腟潤滑液が分泌されていない状態での挿入は、女性に痛みを与えたり、粘膜を傷つけることにもつながります。
 
また、十分に性的な興奮があるのに「濡れない」現象の原因は、ストレスや緊張、出産、更年期、前戯不足、動脈硬化、婦人科の疾患などにあると言われています。

67%の人が性交痛の悩みがある

2017年にジェクスジャパンセックスサーベイの行った「セックスの時に痛み(性交痛)を感じるか」というアンケートで約67%の人が「痛みを感じている」と回答しました。
性交痛とは、セックスを始めようとする時や、セックスをしている時の痛みのことを言います。
痛いのをがまんしていると、やがてセックスをすること自体がおっくうになってしまったり、怖くなってしまいます。
本記事では痛みの原因や治療方法をご紹介しますので、きちんと対策をしましょう。
なかなか人には言えない悩み、是非参考にしてください。
性交痛のメカニズム

性交痛の原因について

まずは、ストレスや緊張が原因となっているケースです。女性はストレスからホルモンバランスを崩すことが少なくありません。ホルモンバランスの変化によって、腟潤滑液の分泌が不足し、うるおいにも影響するのです。
 

出産

続いて、出産が原因となっているケース。産後、大きく変化するホルモンバランスが、腟潤滑液の分泌を現生させ、うるおい不足になる可能性が高くなります。さらに、会陰切開などがさまざまな不安や緊張につながり、筋肉がこわばるなどして痛みを生じることもあります。
 

更年期

更年期が原因となるケースも少なくありません。更年期には、女性ホルモンの一種エストロゲンが次弟に減少し、腟やその周辺部位の弾力やハリも徐々に失われていきます。それによって皮膚や粘膜も弱く薄くなり、うるおいも少なくなっていくため、痛みやかゆみが生じるようになるのです。セックスをするとき以外にも、不快感を訴える女性が少なくありません。
 

前戯不足

また、前戯不足が原因となるケースも見過ごせません。性的な興奮が高まることで分泌されるのが、腟潤滑液です。しかし、前戯が不足し性的に十分興奮しないまま挿入しようとすると、痛みにつながることも。女性は、常にうるおいがあり、男性器を受け入れられるわけではありません。男性がそのことを十分に理解し、女性を思いやって行動することが大切です。
 

動脈硬化

動脈硬化が原因となっているケースでは、性的興奮の高まりがあっても血管壁が開かないため、「濡れる」状態になるのに時間がかかったり、濡れなくなってしまうというものです。
 

婦人科の病気

さらに、婦人科の病気が原因のケースも。骨盤内の腫瘍や性器クラミジア感染症、カンジダ外陰腟炎といった炎症性疾患が原因で、濡れない場合もありますので、気になる方は早期の受診をおすすめします。
 

精神的苦痛

しかし、「濡れない」現象の原因は、これだけにはとどまりません。女性が、妊娠や性感染症などに不安を感じていたり、パートナーとの関係性や環境に何かしらのトラブルを抱えている場合、精神的な問題が原因でうるおい不足に陥ることも否定できないのです。
また、セックスの際に一度感じた痛みが原因で、なかなかリラックスできず、また痛みを感じてしまうこともあります。「濡れない」現象は、女性一人の悩みではありません。これらに心当たりがある女性は、一度ゆっくりパートナーと話し合い、精神的な問題を解消するようにしてみてください。
上記のような問題の原因を理解したうえで、どうしても「濡れない」のであれば、潤滑ゼリーを利用したり、ホルモン補充療法や漢方療法などを受けたりといった方法を試してみましょう。

ゴムのアレルギー(ラテックスアレルギー)

女性の性交痛で、知られていないセックスの痛みがあります。
重症化しときに命に関わるアレルギー。実はSEXの痒み痛みで知られていないのがゴムのアレルギー、ラテックスアレルギーです。
ラッテクスアレルギーによる腟口・腟内の痒み痛み!ある日、突然発症したデリケートゾーンの痒みは?
 

処女膜強靭症

処女膜強靭症とは、処女膜が生まれつき厚く、膣口の入り口が狭く伸びにくい、またリング状に硬くなっている状態です。

処女膜閉鎖症

処女膜閉鎖症の原因は、生まれる前の胎児の成長プロセスにおいて尿生殖洞と腟腔を分けている処女膜が破裂する際に障害が起こり、生後において処女膜が閉鎖されている状態を指しています。

性交痛の箇所

大きく2つの痛みがあります。
①骨盤の奥で感じる痛み
②腟の入り口で感じる痛み

骨盤の奥で感じる痛み

セックスの時に腟の奥の方や下腹部に痛みを感じる場合、クラミジア感染症などで骨盤内に炎症が起こっている、子宮内膜症などで骨盤内の臓器に癒着をきたしている、卵巣腫瘍があるといった原因を疑います。
これらの病気は悪化すると不妊症の原因となったり、手術が必要になってしまうこともあります。
また健康な場合でも、女性は排卵~月経時に腹水がたまるため、強く刺激されると痛みが出ることがあります。

腟の入口で感じる痛み

炎症や感染症

外陰部、膣、膣両側にある分泌腺の炎症や性器ヘルペス、尿道の炎症で痛みが生じる場合があります。
病院を受診し、適切な投薬治療を受けることで改善することができます。
 

処女膜強靭症

生まれつき処女膜が厚いため、膣の入口がとても狭く伸びにくくなっている状態を処女膜切開術を行うことで、その後の膣内挿入がスムーズになります。
※処女膜切開術はクリニックによって保険診療で行うこともできます。

免疫力の低下による膣や外陰部の自浄作用の低下

腟内環境を整えることで改善できます。
 

加齢による膣や外陰部の粘膜の萎縮

閉経を迎えて女性ホルモンの分泌が少なくなると、外陰部や腟粘膜が萎縮して挿入時に痛みを感じやすくなります。
女性ホルモンの膣座薬や内服薬を使用することで痛みを軽減することができます。また腟レーザーによっても痛みを軽減するこが期待できます。
 

体調不良や加齢による潤い不足

ヒアルロン酸等を含む潤滑剤を使うことで痛みを軽減することができます。

痛いと思ったら我慢しないこと!

男性器のピストン運動は腟や外陰部に傷をつけてしまうことがあります。
痛いのを我慢してセックスをし続けると、時に出血したり、セックスの後に常に同じところから出血するようになります。
「性交疼痛症(性交痛)という医学的症状で、女性はセックス中に痛みを感じることがある」(Claire Milbrath/The New York Time)

カリフォルニア在住の産婦人科医ジェン・ギュンター博士が性交痛についてアドバイス

私はときおり女友達からこういった質問を受けます。
 

パートナーになりそうな男性がいるんだけれど、「大きすぎる」んじゃないかと思っているの

 
友人に産婦人科医がいるというのは、何でも聞けるという意味で便利には違いありません。それでも、ほとんど知らないような人から質問されることも珍しくないのです。
 
かつて、当時の夫と私が面識もない人とで、ディナーに出かけたときのこと。自己紹介をすると、パスタを口いっぱい頬張っている私に、ある女性が尋ねてきたのです。
 

私たちセックスができないの。彼のペニスが大きすぎるのよ

 
私は思わず、固まってしまいました。専門家として言いたいのは、「ペニスが大きすぎるからセックスできないというのは都市伝説に近いもので、そんなことはほとんどない」ということ。大抵の場合は、サイズの問題ではなく、性交疼痛症(性交痛)という医学的な症状が原因なのです。
 

「きつい」の多くは「腟けいれん」という症状

「壁にぶつかられているような感じがしませんか?」と私が尋ね返すと、質問してきた女性たちは「あなたは超能力者なの?」とでも言いたげな表情で見つめてきます。もちろん、私はそんな能力を持っていません。
 
タンポンを入れたときやセックスのとき、腟がきつく感じて痛みがあるというのはほとんど「腟けいれん」という症状なのです
 
これは腟口周辺の筋肉(骨盤底筋群)が痙攣し、強く引き締まってしまうという症状。骨盤底筋群は通常、性的刺激を受けると緩み、オーガズムが起こるとリズミカルに収縮します。しかし、これが収縮して締まってしまうと、セックスの際の挿入が困難になったり痛みを感じたり、オーガズムに達しにくかったり、セックスの後にもっと痛くなることさえあるのです。
 

女性の75%、更年期では45%が性交痛を経験

セックスするときに痛みがあるというのは、女性の約75%に経験があること。女性の7~22%が慢性的な性交痛に悩まされており、更年期の女性の45%、がんを克服した女性の60%に性交痛があるとされます。
 
さらに、セックスで痛みを感じた経験があるといった心理的な側面も否定できません。一度痛みを感じると、多くの女性はまた痛くなるのではと思ってしまい、痛みに対して反応しやすくなったり、潤滑液の分泌や「やる気」も減退してしまいます。痛みに対する条件反射ができてしまうわけです。性的なトラウマが原因で、痛みを感じるようになってしまうケースもあります。
 
医学においては、誤った考えを退けて事実を把握するよう努めますが、実際には難しいものです。セックスに関してはそれがさらに複雑になり、いくつもの要素を抱えてしまっています。
 
ほとんどの人が適切な性教育を受けておらず、セックスについてどう語ったらいいかわからないというのも、ハードルのひとつになっています。性交痛や自分の性的欲求についてパートナーと話し合っているかと女性に尋ねると、「そんなことできません」という声を多く聞きます。セックスについて話すことは難しいと多くの医師が感じているのも、問題を複雑にしている要素です。
 
ここで、いくつかの解決法を見ていきましょう。
 

女性のリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)に関するコラム「ザ・サイクル」より。カリフォルニア在住の産婦人科医ジェン・ギュンター博士がアドバイスしています。


性交痛の解決法

セックス全体を見渡す

性交痛の治療には、身体の仕組みや感情的な側面、さらにベッドテクニックは適切かどうか、パートナーとの関係はどうかといったことも関わっています。自分は今、ひどく不幸せだと感じていたら、あなたが求めるような性的刺激は得られないでしょうし、身体も適切に反応しないでしょう。パートナーのことを好きでなければ、どんな治療をしても役に立たないのです
 

潤滑剤を使う

性交痛に悩む多くの女性を救ってくれるのが、ゼリーなどの潤滑剤です。けれど残念なことに、多くの女性から「パートナーの男性が潤滑剤の使用を嫌がる」あるいは「潤滑剤を使いたいと言うとパートナーから非難される、」とも聞きます。私の女友達は、こういったことにとてもがっかりしています。眼鏡が必要な人は劣っている――そう考える人はいないでしょう。いつも眼鏡が必要な人もいれば、歳を重ねて眼鏡が必要になる人もいます。セックスのために潤滑剤を使うことは、読むために眼鏡を必要とするのとまったく変わりません。
 

前戯を十分に

セックスの際に必要な前戯、あるいはこうであってほしいと望む前戯は、人によって大きく異なります。ディナーの席でこの話題になると、男性たちは「前戯は十分している」と口をそろえますが、専門医である私は、疑いの目を向けざるをえません。
通常、最初の診察に女性1人で来てもらうのはそのためです。前戯だけでセックスの痛みが治ることはまれですが、多くの女性はもっとたくさん前戯してほしいと思っています。前戯を2倍にしてみれば、性的にも健康的ですし、何より楽しいはずです。
 

それでも性交痛が改善されない場合は?

色々試してみたけれどどうしても性交痛が改善しなかった方、
血栓症、子宮筋腫や子宮内膜症、乳がん、子宮体がんなど女性ホルモン依存性の腫瘍を合併している方には膣・外陰部の腟レーザー治療がおすすめです!

腟レーザーとは

炭酸ガスレーザーYAGレーザーを膣壁や外陰部に照射し、刺激することで、膣粘膜の線維芽細胞を活性化して新たなコラーゲン生成を促します。
血流がよくなり代謝機能が高まることで、潤いに富み厚みのある粘膜が生成し、弾力がなくなって薄くペラペラになっている膣壁に厚みと潤いを取り戻します。
デリケートゾーンの様々な不快感が改善します。

どんな施術なの?

腟内は痛みを感じないので麻酔は必要ありませんが、外陰部に照射する場合はあらかじめ30分前に麻酔クリームを外用します。
腟内や外陰部にCO2 レーザーやYAGレーザーを数分照射します。(痛みや出血はほとんどありませんが、まれに軽微な下腹部痛や微量の出血などが起こることがあります)
施術後も特別なケアは必要ありませんので、施術後すぐに帰宅できます。
施術後3日間の性交を避けていただくこと以外は特別の注意事項はありません。
※高周波・超音波の照射の場合はダウンタイムはありません。

料金は?

腟レーザーの料金相場のページをご覧ください。

腟レーザーで初めて性交痛治療を検討されている方へ

1回で効果が出る?

1回でもある程度の効果は実感できますが、満足いく結果がでるまでに、1~2ヶ月おきに2~3回の施術を要する場合があります。また、メインテナンスのためにその後は1年に1回ほどの追加照射をお勧めします。

施術中は痛い?

多少の違和感はありますが、痛みや出血はほとんどありません。

施術を受ける前に気を付けることは?

施術前日から施術後3日間は性交渉をお控えください。入浴は翌日から可能です。

出産後、腟が広がったままで緩んだ感じがする…

腟レーザーによっては尿道括約筋を引き締める効果と膣を引き締める効果があります。
また、出産後の性交痛にも有効です。

乳がん治療のために女性ホルモンを止めていても施術できる?

乳がんの治療や子宮筋腫の治療などで女性ホルモンを抑えると、膣や外陰部の粘膜が萎縮して乾燥感や痛みが出たり、膣炎をおこしやすくなります。
膣や外陰部にレーザーを照射して行う腟レーザーは、女性ホルモンを使うことなく膣や外陰部、尿道口の萎縮を改善し、不快な症状を和らげることができます。

閉経前でも施術できる?

女性ホルモンの減少以外にも外陰部や腟が萎縮してしまい、性交痛や外陰部の痛み、尿もれを起こすことがあります。
膣や外陰部のアンチエイジングだけではなく、閉経前でも症状のある方には大変効果があります。
 

性交痛治療の満足度は大きい

性交痛の治療をすると、その満足度は非常に大きくなります。私が治療を手がけてきた健康問題の中で、患者が再度診察に訪れるときにクスクス笑いながら「先生、こんなに気持ちいいなんて知らなかった!」と言うのは、性交痛の症状だけです。
 

まとめ

セックスはコミュニケーションの方法のひとつであり、互いが幸せで心地よい気持ちを感じるべきものです。
痛みを我慢してするものではありません。
ましてやパートナーに合わせるものでも、女性の仕事、というわけでもないのです。
現代には様々な治療法があるので、楽しいセックスライフのために適切に活用して欲しいと思います。
 

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