歴史の中で、恥ずべきものとして扱われたり、宗教的に教えに背く行為である等、ネガティブな面も多い「性について」ですが、性への関心や興味は昔から、国籍や老若男女を問いません。
性化学者たちは、社会通念上切り離して考える事が難しかったセックスというものを、解剖学的、生理学的事実に基づき、客観的に立証するべく研究を行ってきました。
性反応の段階
性行為について広く研究し、キンゼイの研究にも影響を及ぼしたと言われるディキンソン(R.L.Dickinson,1861-1950)は、性の生理について、科学の「唯一臆病な領域である」と表現しました。彼は、性反応に関する統計や解説を発表するべきだと、性に関する研究を行う事が良しとされていない時代から訴えかけてきたのです。
後の1938年から1952年、キンゼイはアメリカ人を対象とした膨大なアンケート調査を行い統計資料として発表しました。
1954年、マスターズとジョンソンによりワシントン大学にて「人間の性反応について」解剖学と生理学の調査が始まりました。被験者は21~89歳の男性312人が対象で、性交時の様子から、性的な刺激によりどのような身体的変化があるかを観察したのです。
また、心理的な反応に関しては、面接により詳細に記録されました。
結果として、性反応の段階は男女同様に、4つの段階に分けられました。
興奮期
身体に触れられたり、性的な事を考えたり感じたりすることで、性的に興奮している状態です。性刺激を受けることで、乳頭勃起・筋緊張・心拍数の増加などがありますが、視覚的に確認しやすい現象として、勃起現象があります。陰茎海綿体に血液が流れる事で陰茎が大きく固くなり、陰嚢は厚みを増し平坦に、精巣は精索が短縮することにより上昇し始めます。
高原期
性的な快感が続き、興奮が強く、勃起が継続している状態です。陰茎は完全な勃起に達しますので、亀頭冠の直径増加、赤紫色への変色、精巣の肥大などの症状が見られます。興奮期と同様の全身反応が見られると共に、が陰陽道口から2,3滴の粘液が分泌されます。これは、カウパー腺から分泌される粘液です。
オルガズム期
性的興奮が絶頂に達し、男性副性器の収縮により射精が起こり、快感を伴う状態です。精液は外尿道口から排出され、男性は無反応期に入ります。
一定時間が経過しないと、再び射精することはできません。その他の反応として、国家ウ金の不随意的収縮や痙攣などを伴う事があります。
消退期
陰茎海綿体に流れ込んだ血液が減少し、陰茎は2段階を経て、勃起状態が解消されていきます。時間としては約30分間で、精巣の大きさや位置も元に戻り、充血や筋緊張も平常の状態に戻っていきます。30~40%の男性に、発汗がみられます。分類された4つの段階は、性交という一連の流れで起こる変化や症状を、特徴で分けて分類しています。
カプランは、男性の性反応が勃起と射精という、解剖学的には別々の構造を持っている事から、①性欲相、②充血相(勃起)③オルガズム相(射精)と分類しました。
これは、性機能障害が起きた際に①~③のどの段階に問題があるのかを明確にし、治療を行う重要な分類となりました。
性的興奮のメカニズム
1.視覚・聴覚・嗅覚に加え、性的な想像・妄想を行う2.大脳皮質の性的刺激となり、性的感情が沸く
3.大脳辺縁系にある性欲中枢を興奮させる
4.間脳視床知下部の間脳性勃起中枢を興奮させる
5.下降性に脊髄仙髄部にある脊髄性勃起中枢に伝達される
6.末梢神経を経由して性器に反応が起きる
性的興奮はこのように、中枢性性的興奮と末梢性性的興奮とが相互に関連することで加重し、強化されます。
勃起のメカニズム
人の陰茎は、陰茎海綿体と尿道海綿体が、白膜という硬い膜で覆われてできています。勃起とは、陰茎海綿体に血液が流れ込む事で内圧がかかり、陰茎が硬く、大きくなる事を言いますが、尿道海綿体は膨張のみで、硬くなることはありません。陰茎海綿体の血液は、陰茎深動脈から送られます。射精のメカニズム
視覚、聴覚、嗅覚、による中枢性性的興奮と、直接的な刺激による末梢性性的興奮の状態が高まり、射精中枢が興奮すると、下腹神経に含まれる交感神経を介して射精がおきます。精液は精嚢から射精管を通って尿道へ排出され、尿道口から体外へ射出されます。