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公開日:2021/04/21
最終更新日:2021/04/21

婦人科医が行うセックスセラピー

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前回は、セックスセラピストとしての性機能不全の解決方法に関してまとめました。今回は、婦人科医が医学的診断や治療をどのようにして行っていけば良いかを解説していきます。

性的欲求の障害、性的興奮の障害の診断

女性が性的欲求や興奮が起こらないといった診断に関しては、医学的診断方法が確率されていません。男性ホルモンが原因の1つだと考えれば、閉経、授乳中、無月経、低用量ピルの服用などが理由の1つとして考えられます。

 

つまり、男性ホルモンの投与や低用量ピルの中断などで、診断的な治療は可能です。

性的欲求の障害、性的興奮の障害の治療

男性ホルモン療法を行っても、心理的な要因が関係していないとは言い切れません。男性の場合は糖尿病によってEDが生じることもありますが、女性にはそういった関連性は少なくなっています。

 

女性の性欲障害治療薬として、アメリカ食品医薬局で唯一認められているのが、フンバンセリンです。更年期女性の性欲低下に有効とされていますが、低血圧や昏倒のリスクもあるため、アルコールとの飲み合わせや肝機能障害には特に注意する必要があります。

女性のオルガズム障害に関して

そもそもオルガズムは、性的興奮によって伸び広がった骨盤底筋が交感神経系の反射によって収縮を繰り返して復帰する短時間の反応のことを指します。性的興奮していて、充血期の反応があるのにオルガズムが起こらない場合は性心理学としては無意識にオルガズムを回避していると考えれています。

 

医学的に診断するのであれば、血管、神経、筋肉の劣化・老化、疾患が原因となるため、これらに関して診断が必要となります。

 

女性の場合は、脊髄損傷や血管障害、末梢神経障害もオルガズム障害の原因になります。そのきっかけとなるのが、骨盤内の悪性腫瘍手術を行う場合などです。ただ基本的に女性の場合は多くの神経と血管で補えるため、男性ほど身体的な影響は見られないとされています。

性的疼痛障害

性交痛に関しては、他の性機能不全に比べて身体的な影響が圧倒的に大きいと考えられます。そのため注意深い診察が必要です。

性交痛の症状と原因

ペニスの挿入時、摩擦によって焼けるような痛みが数日間に渡って続くことがあります。多くの場合はエストロゲン欠乏によって腟潤滑液が流出できていないケースが多く、閉経や無月経だと起きやすい症状です。

 

外陰は、神経が多数集まっていることから小さな傷でも痛みが激しくなり、下着が触れているだけでも痛みを感じる人もいます。

 

会陰の痛みが強い場合、多くは出産時の会陰裂傷や切開瘢痕痛が原因です。

 

その他にも性交痛は、外陰・前庭炎症候群、易刺激性腟前庭痛などと呼ばれ、感染症が先行しているケースや精神疾患を伴うケースなど、病因は様々です。

性交痛の診断方法

診断方法は、視診、痛みの観察、指による触診によって行います。

視診では、外陰、会陰、腟前庭部の萎縮・乾燥、傷、瘢痕、炎症を観察します。腟鏡を使って腟粘膜の萎縮や分泌物の状態、腫瘍の有無を確認します。

次に綿棒などを使って軽く触れ、痛みを生じる部位と視診時のポイントにズレがないかを観察。

 

最後に圧迫による外陰・会陰・腟の痛み、粘膜の状態や挿入時の腟の不随意収縮の有無を観察します。

性交痛の治療方法

エストロゲン欠乏が原因と考えれる場合は、ホルモン補充療法が用いられます。中でもエストリオールは子宮内膜増殖作用が少なく、他の副作用も少ないとされています。ただ、エストロゲンは乳がんや子宮内膜がんの場合は禁忌とされているため、潤滑ゼリーを使った治療も多くなります。

 

会陰切開瘢痕や、外陰、骨盤の良性、悪性腫瘍手術には、肉芽や瘢痕除去などの再建手術も提案されています。

 

これらの治療法は、セックスセラピーとしてのカウンセリングや認知行動療法との組み合わせが勧められます。

骨盤内に痛みを起こす疾患

子宮、付属器、骨盤内腹膜、膀胱、腸管に炎症や癒着、腫瘍があると、性交時奥の方で痛みが生じます。この場合の代表的な疾患としては、子宮内膜症があります。骨盤内にできた硬拮や癒着が痛みの原因となります。他にも稀ですが、子宮筋腫や腺筋症も性交痛の原因となります。

 

これらの原因は、心身症としての性交痛と見分けるのが難しくなっています。

心身症としての性交痛

器質的な疾患や身体的な問題が見られない場合でも性交痛が起こる場合があります。その場合は、心理的な要因が重なっている場合が多くなります。

 

1つが、腟潤滑液の過少。性的興奮がないのにペニスを挿入していたり、パートナーに嫌悪感を抱いているのに性交している場合に起こります。

 

2つ目が、不安や緊張から来る腟の不随意収縮。不安や緊張の程度が強くなると挿入が難しくなります。

 

3つ目が、骨盤底への鬱血。慢性的な緊張によって鬱血が起こると日常的にも骨盤に痛みが生じます。オルガズムのない性交を繰り返すことで、慢性の骨盤鬱血を引き起こす可能性があります。

挿入障害

挿入障害は基本的には、心因性の疾患です。しかし、診断のためには婦人科医の所見が必要となり、世界でも多くの婦人科医兼セックスセラピストが診察に当たっています。

 

挿入障害は主に、腟への挿入とそれに関連する行為への恐怖が原因となっています。そのため診察台に座って行われる婦人科診察は克服への疑似体験となり、経験となる場合が多くなります。

婦人科が行う挿入障害への行動療法

婦人科での診察を応用して、腟への何らかの挿入を体験させることで、治療を行っていきます。自分の指を1本で腟の入口に触れる、入口を通過する、奥まで挿入する、指を左右に動かして腟壁が伸びるのを体験する、ここまでクリアできたら指2本で同様に練習を行います。

 

また、挿入に対して緊張すると腟の収縮が起こってきついと感じられます。これを言葉と実体験で得るのが良いでしょう。

ケーゲル体操で腟のコントロールを行う

緊張をほどいて腟の収縮を解こうとすると難しいですが、腟をコントロールできるようになるとリラックスしやすくなります。腟周辺の筋肉を緩ませる動きと力を入れる動きを交互に繰り返すケーゲル体操は、挿入障害にも効果的です。

 

イメージができない人には、尿を止める動きを出す動きをイメージしてもらうと理解してもらいやすくなります。

処女膜強靭症について

処女膜強靭症は、生まれつき処女膜が堅く、分厚い状態を指します。通常何回か性交をすることで痛みを感じなくなるものですが、処女膜強靭症の場合は腟口が狭く閉じてしまっていることで何度性交を経験しても痛みが起こってしまいます。

 

ただ、処女膜強靭症だからといって安易に処女膜切開術をしても、挿入障害は改善されません。処女膜起始部が硬いだけの場合は、指が1本入るのがやっとだったとしても、リラックスが進めば大抵の場合処女膜は腟壁と同時に伸展します。

 

ほぼ膜様で、小さな開口部から経血が出るだけの場合は手術が必要な場合もあります。手術の場合は処女膜輪状切除を行って、術後切除による拘縮が起きないよう注意しましょう。

 

まとめ

女性の性機能不全の治療には、セラピストやカウンセラーとしての立場だけでなく、婦人科医としての診察は非常に重要になります。

 

特に性交痛の問題に関しては、心因的な問題だけでなく、何らかの疾患や感染症から来ている可能性もあるためです。

 

また、セラピストの観点での治療と婦人科医としての治療を並行して進めるのが重要になります。

 

参考文献

Thommas HN,ThurstonRC,A biopsychosocial approach to women,s sexual function and dysfunction at midlife:A narrative review.Maturitas.2016:87:49-60