前腟壁女性尿道周囲組織の自律神経および感覚神経支配に関する免疫組織化学的検討: カダベリック・シミュレーションを用いた中尿道スリング手術の術野に関する研究(原題:Immunohistochemical Investigation of Autonomic and Sensory Innervation of Anterior Vaginal Wall Female Periurethral Tissue: A Study of the Surgical Field of Mid-Urethral Sling Surgery Using Cadaveric Simulation)
The Journal of Sexual Medicine, 18巻, 7号, 2021年7月, 1167-1180ページ,
https://doi.org/10.1016/j.jsxm.2021.05.002
発行2021年6月24日
背景
煩わしいストレス性尿失禁を治療するための中部尿道スリング(MUS)手術後に、女性オーガズム障害を含む女性の性機能障害が報告されている。前腟壁-女性尿道周囲組織(AVW-FPT)には、女性の性的反応に関与する自律神経および感覚神経が存在すると考えられ、MUS留置によりこれらの神経が傷害される可能性がある。
目的
免疫組織化学(IHC)を用いてAVW-FPTの自律神経および感覚神経の特徴を明らかにし、移植されたMUSとの近接性を評価すること。
方法
AVW-FPTは4体の新鮮な死体から注意深く解剖して摘出した。解剖に先立ち、泌尿器科医による筋膜スリング を用いたMUS手術のシミュレーションを1体行った。すべてのサンプルはパラフィン包埋、切片化され、ヘマトキシリンで染色された。神経を同定するために、連続切片作製とIHCを行った。感覚および自律神経支配の特徴を明らかにするためにIHCマーカーが用いられた。
結果
自律神経および感覚神経マーカーのIHC局在は、MUS植え込み領域内の神経組織と一致した。
結果
一般的な神経染色であるプロテイン遺伝子産物9.5(PGP9.5)を用いたAVW-FPTのIHCにより、MUS植え込みの対象領域全体に神経支配が認められた。具体的には、自律神経(チロシン水酸化酵素、TH)と知覚神経(Nav1.8およびS100ß)の両方の免疫反応性が、移植したMUSの近傍(1mm未満)で認められた。さらに、S100ß陽性神経の一部には、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に対する免疫反応性も認められた。IHC所見とMUS植え込みの手術シミュレーションを組み合わせることで、MUS手術の直接的な結果として自律神経と知覚神経の両方に損傷が生じる可能性が明らかになった。
臨床への応用
AVW-FPTの同定された自律神経と感覚神経は、 女性の性的反応に寄与している可能性があるが、 MUS手技によって悪影響を受ける可能性がある。前立腺を含む男性生殖器組織に対して行われる手術は、神経損傷に続発する性機能障害を引き起こす可能性があり、泌尿器科医はこの可能性に関するインフォームドコンセントを日常的に行っていることから、泌尿器科医はMUS手技を受ける見込みのある患者から適切なインフォームドコンセントを得ることが推奨される。
長所と限界
本研究は、MUS留置術の術野内の感覚および自律神経支配の特徴を明らかにし、MUS留置術との関係を実証した初めての研究である。サンプルサイズが小さいことが本研究の限界である。
結論
本研究は、MUS留置の結果としてAVW-FPTの自律神経および 感覚神経が傷害される可能性を示す証拠であり、一部の女性で 報告されている術後の女性性機能障害に関与する根本的なメカニズ ムを説明する一助となる可能性がある。