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公開日:2019/12/04
最終更新日:2021/05/24

尿失禁手術の歴史と手術方法について[2019.12.4公開]

投稿日:2019年12月4日 更新日:

尿失禁手術の歴史と手術方法について[2019.12.4公開
尿失禁に悩む女性は3人や4人に1人いると言われており、どのような方にも尿失禁になる可能性があります。
しかし、尿失禁はとてもデリケートな病気であり、周りの方や家族にもなかなか相談できないという方が多いことでしょう。
ここでは、尿失禁手術の歴史と、どのような手術方法があるのかをご紹介していきます。

2000年ころから改善された。

2000年ころから尿失禁手術は改善されてきており、「吊り上げ」方式の手術からTVT手術やTOT、TFS手術など、手術の方式がどんどん変化し、患者さんの負担も減るような手術に変わってきています。
 

尿失禁理論の変化

「吊り上げ」方式を行っていた時代(角度重要だと思われていた時代)と、現代では尿失禁の手術に関する理論が変化しています。
一昔前までは、尿失禁手術で重要なのは「角度」でした。
尿失禁を防ぐためには膀胱や、尿道の角度を適切な状態にしなければ尿失禁に繋がると考えられており、その結果「バーチ手術」や「筋膜スリング手術」が利用されていました。
 
 
 

バーチ手術

バーチ手術とは、患者さんの腹部にメスを入れ、膀胱尿道移行部を露出し、糸で吊り上げるという方式で、腟壁を縫って吊り上げるというものです。
一昔前まではこの手法が一般的で、患者さんの体に大きな負担が掛かっていました。

筋膜スリング手術

次に、筋膜スリング手術ですが、バーチ手術よりも長く30年ほど前まで利用されていた手術の方式で、腹直筋を露出させることでその筋膜を利用し、筋膜をテープ状にして利用することで尿道下に移植する手術の方式となります。
これらバーチ手術と筋膜スリング手術は今でも利用されており、その効果を否定するものはありませんが、昔ながらの手法という形になります。
しかし、これらの手術は患者さんの負担が大きいため、よほど重症な症状ではない限り、この手術は利用されてきませんでした。

ステーミー(ステイミー)手術の出現

患者さんの負担が大きい手術しか無かった時代に少しの光がともされたのが「ステーミー(ステイミー)手術」です。
このステーミー手術は患者さんの負担が、これまでのバーチ手術や筋膜スリング手術よりも少ない方法で、膀胱の脇を持ち上げて、膀胱と尿道の結合部あたりを引っ張り上げる、膀胱頚部を吊り上げるという方式です。
ステーミー手術が出来るようになってから、患者さんの負担が少なくなったことで、この手術を取り入れる医師が多くなりました。
しかし、それでも手術後1,2週間は排尿困難となり、自己導尿という指導を受けながら尿漏れや排尿困難が無くなることを待つというのが尿失禁手術の常識となっていました。
 
ステーミー(ステイミー)手術の出現

TVT手術の出現による大きな転換

これまでのバーチ手術や筋膜スリング手術、ステーミー手術では、排尿困難になるほか、排尿困難が改善された後にまた尿もれを再発させてしまうなど、手術をしても改善されないという例が多くあり、その割合は40%ほどとも言われています。
しかし、1990年代後半に日本に上陸した手術方式が「TVT手術」です。

吊り上げる以外の手術の出現

TVT手術は、「tension-free vaginal tape」という手術方式で、これまでの吊り上げるという方式から一転し、「ただ置くだけ」という形の手術です。
これまでの手術では、吊り上げるということが一般的で、どのような手術においても吊り上げることが重要と考えてこられました。

テンションフリー理論(緊張を与えない方式)

TVT手術の言葉の中にあるテンションフリーこそ、尿失禁手術に革命を起こした発想となり、これまでの吊り上げ方式からテンションフリー、つまり緊張を与えないという方式に変化を遂げました。
尿失禁で利用するテープやシートを利用して吊り上げるのではなく、尿失禁などの骨盤底障害は、このテープやシートを置くだけで改善されていくという考え方がテンションフリー理論と呼ばれています。
吊り上げ方式ではないため、この方法により、尿失禁の手術が終わった後も排尿困難になる方が減ってきました。

テンションフリー理論を生んだインテグラル理論

このテンションフリー理論の元となる理論が「インテグラル理論」と言い、インテグラル理論は1990年初めにウィルムステンとペトロスによって打ち出されたもので、尿もれの原因は尿道が曲がることにあり、その曲がる原因は、骨盤底筋群が瞬時に収縮することにあると考えられました。
その結果、骨盤底筋群を強化すること、恥骨尿道靭帯の強度を高めることが、尿もれを防ぐ方法だという考えを打ち出し、今のTVT手術の方式に繋がったと言われています。
現代では、このTVT手術により90%以上の尿失禁手術が成功し、患者さんの負担も少なくなっており、多くの医師がこのTVT手術を採用しています。
テンションフリー理論を生んだインテグラル理論

排尿困難になる理由とは?

TVT手術が広がり、患者さんの負担を少なすることが可能となりましたが、今でも排尿困難になる患者さんがいます。
その理由はどのようなものなのでしょうか。

膀胱収縮力の低さ

排尿困難になる理由の一つに、膀胱収縮力の低さが挙げられます。
膀胱収縮力とは、その名の通り膀胱を収縮する力のことで、これが弱まることで排尿困難になるケースがあります。
これは、尿失禁手術をする際にわかることですが、手術をする前に残尿検査をする際、一般的な尿もれ患者さんは残尿が0mlであるケースがほとんどですが、残尿が10mlや20mlある患者さんは、尿もれ状態で尿道の抵抗がほとんど無いにもかかわらず残尿があるということになるため、膀胱収縮力が弱まっており、術後、排尿困難につながるということが考えられます。

尿道の機能が悪い

次に、尿道の機能が悪くなっているというケースもあります。
一般的な尿失禁の場合には、骨盤底筋と恥骨尿道靭帯の補強をすることで改善されていきますが、症状が重度の場合には、尿道自体の機能が低下しているケースがあります。
その場合、尿道抵抗を高めることが必要になり、その場合、尿失禁が再発する・排尿困難になるというケースがあります。
この場合には、自己導尿を続け、数か月経過を見ながら状況によって別の対策をする形となっていきま
 

TVT手術の欠点(デメリット)について

TVT手術は、これまでのバーチ手術やステーミー手術よりも患者の負担が少なく、成功率も高いという画期的な手術ですが、欠点もあります。

後腹膜血腫が起こることも

TVT手術を行うことで後腹膜血腫が起こるケースもあります。
これは、手術を行う際に、血管を刺してしまうことで起こることがあり、術後に血腫があることが見つかるということがあります。

腸閉塞などの合併症

TVT手術によって腸閉塞などの合併症になるケースもあります。
これについても、手術をした際に腹腔内と後腹膜の境界にある腹膜を刺してしまうことで、腸閉塞を起こしてしまうというもので、合併症などの危険も少なからずあります。

合併症を回避する「日帰り尿失禁手術TFS」とは?

TVT手術はこれまでも多くの患者さんを救ってきた画期的な手術ではありますが、合併症を引き起こす危険性や、血管を刺すことによる後腹膜血腫などを引き起こしてしまうケースもあり、そこで開発されたのがTFS手術というものです。

TVT手術と同様の方法??

TFS手術は、TVT手術の理論を打ち出したペトロスという方が考案した手法で、TVT手術と同様のやり方でありながら、その方法にプラスαの考え方を追加し、ポリプロピレン製のホックを利用して行うというモノです。

合併症がほとんど0に近い

このTFS手術は手術の負担が少ないため、日帰り手術を実現しており、この手術の出現によって先述した後腹膜血腫や合併症などの危険性が少なくなり、ほとんどの手術で合併症などの報告が無くなりました。
 

さらに現代の尿失禁手術「TOT手術」も!

TVT手術やTFS手術によって多くの患者さんが救われてきましたが、最近ではTOT手術という新しい手術も現れています。

TOT手術とは?

TOT手術とは、これまでのTVT手術と同様にテンションフリー理論によるもので、TFS手術と同様に被害り手術が出来るようになります。
そして、TFS手術と同様に合併症を引き起こす危険性や後腹膜血腫などを引き起こす危険性も低くなっています。

TFS手術との違いは?

TOT手術とTFS手術の違いとしては、やり方はほとんど同じですが、利用する「テープ」の向きが違うところにあります。
TFS手術はU字型にテープを置き、TOT手術はT字型にテープを置き、この違いが二つの手術の違いとなっています。
TOT手術はTVT手術よりも合併症などを引き起こす危険性は低いですが、重度の患者さんについては、改善されない可能性があり、その場合にはTVTやTFSの手術を行うケースがあります。

まとめ

これまで、尿失禁手術の歴史と手法についてお伝えしてきましたが、結論としては、TFS手術は日帰り手術が可能で患者さんの負担を少なくすることができ、合併症などを引き起こす危険性も少ない手術ですが、TOT手術よりも幅広く、患者さんの症状に対応できる手術として利用されています。また非外科の尿漏れ治療だと腟レーザー治療もございます。手術に不安がある方、費用面でご検討されている方は腟レーザー治療もお読みください。
しかしながら、全ての患者さんがこの方法で治るというモノではなく、あくまでもそれぞれ個人の症状や状態によって医師が判断するものということを忘れないでください。
 

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