ラットにおけるメタンフェタミン誘発性腟血流の変化 (原題:Methamphetamine-Induced Alterations of Vaginal Blood Flow in Rats)
The Journal of Sexual Medicine, 19巻, Issue Supplement_3, August 2022, ページ S10-S11,
https://doi.org/10.1016/j.jsxm.2022.05.026
発行:2022年8月1日
はじめに
腟の乾燥に悩む人は、一度経験したか慢性的に経験したかにかかわらず、痛みを伴う不快な性体験や自尊心の低下を頻繁に経験している。腟の経腟分泌物産生の生理学は古くから確立されているが、エストロゲン以外の薬理学的治療法では、腟乾燥症の軽減に有望なものはない。以前、私たちの研究室では、メタンフェタミン(メス)が成人女性と麻酔ラットにおいて腟潤滑を誘発することを示した。これらの腟分泌物の産生は、用量依存的であると同時に一酸化窒素依存的であることが示された。腟潤滑液の分泌は、局所の血行動態とその結果としての生殖器組織への血流増加に大きく依存しているため、メスによって誘発されるこれらの組織への血流変化を明らかにすることが最も重要である。
目的
本研究の目的は、メスに反応した腟血流の増加が腟潤滑の増加と相関するかどうか、またこの血流の変化が一酸化窒素依存性であるかどうかを明らかにすることである。
方法
Wistar系雌成体ラットに慢性頸静脈留置カテーテルを留置し、手術から少なくとも1週間回復させた。イソフルランガスで麻酔したラットに、メス(0.06-0.96mg/kg)または生理食塩水を留置カテーテルから静脈内注入した。腟血流は、Periflux System 5000と腟管に5~10mm挿入した小型レーザープローブを用いて測定し、薬物投与前と投与後少なくとも20分間は連続的に記録した。メスによる腟血流の変化を確認した後、非特異的一酸化窒素合成酵素阻害剤であるL-NG-ニトロアルギニンメチルエステル(L-NAME)で前処理し、血流測定と同じ手順でメスを投与することで、観察された血流の変化に対する一酸化窒素の寄与を明らかにすることができた。
結果
予備的知見によれば、メスの静脈内注入は、腟血流の即時的増加を誘発し、その後、交感神経緊張の亢進を介した血管収縮により血流が減少する。一酸化窒素の産生を阻害することで、メス投与直後の血流増加が抑制されることが予想される。
結論
これらの知見は、われわれが以前に報告したメスによる腟潤滑について洞察を与えるものであり、交感神経刺激作用によって従来から血管収縮を誘導しているメスが、腟組織の血流増加を生じさせ、これが生成される経滲出液の増加の原動力となっている可能性が高い。この進歩は、腟乾燥症を治療するための最適な薬理学的標的となりうるメカニズムを明らかにする上で極めて重要である。